日立グローバルライフソリューションズ 常務取締役 COOの山田三紀夫氏(撮影:榊水麗)

 日立ブランドの家電製品は現在一部が「指定価格」によって販売されている。指定価格とは、メーカーが製品の販売価格を設定し、店頭での値引きを抑える仕組みのことだ。

 製品の価格維持の施策として注目されることが多いこの制度。しかしその導入理由について、「ものづくりに携わる従業員のエンゲージメントを高めるためだった」と語るのは、日立ブランドの家電事業を担う日立グローバルライフソリューションズ常務取締役COOの山田三紀夫氏だ。その真意とは何か?

日立の家電が「未来永劫の成長」を実現するために

──日立グローバルライフソリューションズ(以下、日立GLS)では、2023年10月から一部の製品において、指定価格による販売を開始しています。そもそもなぜ、指定価格を導入したのでしょうか。

山田三紀夫氏(以下、敬称略) 大きな理由は二つあります。一つは、お客さまの安心のため。もう一つは、ものづくりに携わる全ての従業員のモチベーションのためです。価格維持を目的とした販売戦略と見られることの多いこの施策ですが、本質はあくまでこの2点です。

 まず「お客さまの安心」について。指定価格は、当社が同時期に始めた「日立家電品正規取扱店制度」の中で導入しました。この制度は、電子商取引(EC)をはじめ、国内の家電市場における販売形態が多様化する中で、お客さまが安心して製品を購入できる環境を整備するために作られたものです。

 自分の買った製品が、別の店舗でもっと安く販売されていたら、お客さまは安心して買いにくいでしょう。店舗ごとの価格差をなくし、どこでも同じ適正な価格で購入できることが、お客さまの安心感につながると考えました。

 また、もう一つの「ものづくりに関わる全ての従業員のために」という点については、指定価格導入前は、高付加価値商品にも関わらず発売から1年ほどで3~4割も価格が下がることも珍しくありませんでした。自分たちが開発に携わった製品が、短期間で値下げされるのを目にするのは、従業員のモチベーションにプラスにならないのではと感じていました。