三菱UFJ銀行 取締役常務執行役員 CHROの南宏氏(撮影:榊水麗)

 三菱UFJフィナンシャル・グループの中核企業である三菱UFJ銀行は、2019年に人事制度を大きく変更した。だがその後の人材環境の激変を受け、この2年間で再度人事制度の改革を実施し、さまざまな施策を導入している。同社が目指す、多様な人材がプロフェッショナルとして挑戦し続ける企業組織を、どのように実現しようとしているのか。CHRO(最高人事責任者)である南宏氏に、人事制度と施策の狙いを聞いた。

「社員のキャリアは会社が決める」という固定概念からの脱却

――三菱UFJフィナンシャルグループ(MUFG)の人事制度は、挑戦する人を評価する形に変化してきたそうですが、それはなぜですか。

南宏(以下、敬称略) 当社は2024年4月から始まった中期経営計画で「成長戦略の進化」「社会課題の解決」「企業変革の加速」の三つのテーマを掲げています。これを支える重要な要素が、人的資本の拡充です。

 人事部門の役割は、社員一人一人がプロフェッショナルとして挑戦する人材になれるよう後押しすることであり、そのために人事制度を見直し、社員のキャリア形成を支援する施策を実施しています。

 当社の人事制度は、2019年に大きな制度改正を行っており、それが現在のベースになっています。そのときに給与体系を職能主義から職務(ジョブ)重視、年功から実力主義へと変更し、社員の頑張りが報酬に直結するメリハリのある処遇に変更しました。社内公募制度の拡充で、個人の挑戦を促す仕組みも設けています。

 しかし、その直後のコロナ禍で働き方が大きく変わり、人材の流動化も進みました。さらに最近では、銀行業界にとって大きな転機となる「金利のある世界」が到来し、長く続いた低金利時代が終わりを迎えています。こうした変化を受け、2024年から2025年にかけて、さらに人事制度を改定して社会の変化に対応しようとしています。

 新人事制度では、二つの新しい枠組みを設けています。一つが「プロフェッショナル職」の新設です。これは全社員が対象で、旧来型の総合職、一般職という垣根を取り払い、全員がプロフェッショナルとして自分のキャリアを長期的に考えていくための取り組みです。これに伴い、社員一人一人が自分に合ったキャリアを実現する機会を持てるように、さまざまな施策を打っていきます。