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 東急線沿線を中心にスーパーマーケットを展開する東急ストアは、人手不足問題に対応するため店舗のデジタル化に力を入れる。小売業のDXは、現場の従業員や顧客の理解がなければ成り立たない。同社DXのリーダーであるビジネスソリューション部長の落合和彦氏に、スーパーマーケットの未来とデジタルの役割、店舗におけるDXの進め方について聞いた。

業務効率化のためデジタルを活用

――東急ストアではさまざまなDXの取り組みを進めていますが、顧客接点に関するものも目立ちます。なぜですか。

落合和彦氏(以下、敬称略) 最大の理由は、人手不足です。少子高齢化が進み、働き手が少しずつ減少する中で、採用環境もかなり厳しく、今ある業務をどうこなしていくかが重要になっています。

 最近では、パートナー従業員が高齢化を理由に退職されるケースが増えています。また、当社は東急線沿線の駅前に多く店舗を構えているため、夕方の帰宅時間帯に利用されるお客さまが多く、ピーク時に合わせた人員を確保しなければいけません。

 近年は競争が激しく、大学生のアルバイトもなかなか採用が進まない状況です。当社も処遇や時間帯などの改善を進めていますが、採用活動だけで働き手の不足を解消するのは難しいのが現実です。

 一方で、スーパーマーケットの業務は決済方法の多様化など複雑さを増しており、以前よりも従業員の負担が増えています。

 こうした状況の中で、少ない人数でこれまで通りの店舗運営の質を維持するためには、効率化を進め、生産性を上げるしかありません。これが、当社のデジタルの取り組みが業務効率化の手段として多く用いられていることにつながっています。

 省人化のためのDXは、攻めか守りかと言えば、守りということになりますが、とにかく現場の効率化が喫緊のテーマであり、今こそDXを進めなければいけないと考えています。