
民間企業によるロケット開発、人工衛星を利用した通信サービス、宇宙旅行など、大企業からベンチャー企業まで、世界のさまざまな企業が競争を繰り広げる宇宙産業。2040年には世界の市場規模が1兆ドルを超えるという予測もあり、成長期待がますます高まっている。本連載では、宇宙関連の著書が多数ある著述家、編集者の鈴木喜生氏が、今注目すべき世界の宇宙ビジネスの動向をタイムリーに解説。
2025年5月にトランプ政権が提示した2026年度予算要求では、NASAの予算が大幅に削減されており、国内外で波紋を呼んでいる。日本の宇宙産業への影響は? そして、宇宙での覇権争いをリードしようとする米国の新たな計画とは?
各国を巻き込むNASA予算の大幅削減案
トランプ政権が5月に発表した大統領予算要求(予算教書)が米国内で議論を巻き起こしている。それによると、NASA(米航空宇宙局)の2026年度予算は昨年度の248億ドル(3兆5700億円)から188億ドル(2兆7100億円、24%減)へ大幅に削減される見込みだ。これは各省庁の中でも、NOAA(米海洋大気局)の25%減と並んで極端な数字と言え、その結果、NASAの多くの計画が中止されそうだ。
大統領予算要求とは、大統領が議会に対して提示するもので、そこには各省庁への予算配分や政策の優先事項が記載されている。NASAの予算に関しては、「簡易版」が2025年5月2日、「詳細版」が同月30日に発表された。
その予算案の最大の特徴は、NASAのあらゆる予算を削減し、多数の計画を中止する一方で、月と火星にヒトを送り込むための予算だけが増額されている点にある。NASAのプロジェクトには国際協力によって成り立つものが多く、来年度の米国予算の行方によっては各国とその事業体が大きな打撃を受ける。