写真提供:DPA、Jaque Silva/NurPhoto/共同通信イメージズ

 四半世紀にわたりグーグルは検索と広告で圧倒的地位を築いてきた。その強さの裏に潜んでいた「唯一の死角」が、ChatGPTの登場によって突かれた。AIに尋ね、答えを得るという新たな情報検索のスタイルが、グーグルの広告モデルの根幹を揺るがしているのだ。

 生成AI時代の到来で、祖業の見直しと収益モデルの再構築を迫られるグーグル。同社が迎える過酷な正念場を、『世界のDXはどこまで進んでいるか』(新潮新書)の著者・雨宮寛二氏が解説する。

グーグルのビジネスモデルの「唯一の死角」とは?

 グーグルは、今、とてつもなく難しい経営の岐路に立たされている。その最大の要因となっているのは、言うまでもなく生成AIである。オープンAI は、2022年11月に鳴り物入りで「ChatGPT」をサービス化し、たちまち生成AIの存在を新たな検索の手段として世に知らしめた。

 1998年の創業以来、グーグルはおおよそ四半世紀もの間、広告を基盤とした検索サービスをDXにより構築して独占的なリーダーのポジションを築き上げてきた。検索サービスを無料にして利用者を増やす一方で、広告主を募って有料で収益性を高めたため、「ググる」は一般名詞化しネット検索の象徴にもなった。

 このビジネスモデルの唯一の死角は、「キーワード検索」にあった。本来、人は知りたいことを文章や会話形式で尋ねたいものだが、従来のAIでは、コンテクスト(文脈)を正確に理解することが難しく、多くの参入者が現われたが、実用的な文章検索は実現されてこなかった。

 しかし、そこにChatGPTが登場した。ChatGPTは、大規模言語モデルGPT-3.5を活用した会話型AIで、その導入の手軽さと精密な返答から世界規模で急速に利用者を増やし、2023年1月には月間アクティブユーザー数が1億人に到達し、これまでのICT(情報通信技術)サービスの普及の記録を塗り替えることになった。