2024年9月にスタートした「うれしい値!」。低価格商品の訴求は近年のセブン-イレブンでは異例。写真はセブン-イレブン・ジャパン 取締役執行役員 商品本部長の羽石奈緒氏(筆者撮影、以下同)

 日本のコンビニをけん引してきたセブン-イレブン・ジャパンが異変に見舞われている。最も重視すべき既存店売上高が低調に推移し、突破口を見いだせずにいる。ファミリーマート、ローソンと比較しても、見劣りがする数字が続く中、果たしてセブン-イレブンに再成長の芽はあるのか、コンビニ業態の可能性も含めて、流通ジャーナリストの梅澤聡氏が論じる。

セブン-イレブン売上高伸び悩みの要因は?

 セブン-イレブンの業績低迷が各種メディアで報じられている。まずは最近の数字から見ていこう。

 加盟店ビジネスは既存店の前年比が特に重視されるが、セブン-イレブンは2024年度の5月から9月まで既存店売上高が4カ月連続してマイナスをさまよった。一方のファミリーマート、ローソンが前年を全ての月でクリアしているだけに、セブン-イレブンの不調が余計に際立った。

 2025年度(2025年3月以降)に入っても数字は低調のままで、セブン-イレブンの既存店売上高は3月(前年同月比+1.0%)、4月(+1.0%)、5月(0%)とパッとしない。一方のファミリーマート、ローソンは、前年同月比+3%~5%台の高い水準を維持している(下記図表)。

 売上高は「客数×客単価」、その客単価は「1品単価×買上点数」に分解できる。

 2025年度は食材原価の高騰により小売業全般で1品単価の上昇が続いている。ファミリーマート、ローソンの客単価は、その恩恵に預かっていると想像がつく。

 セブン-イレブンは、2024年9月より「うれしい値!宣言」と称して「松竹梅」の「梅」(低価格ライン)を強化してきた。生活防衛意識の高いお客に向けて、買いやすい価格の品揃えを厚くした。客単価の伸長が他と比較して鈍いのは、「梅」強化の価格政策が影響したと見ることもできる。

 その一方で見逃せないのが「客数」である。1品単価の低い「梅」の商品を増やしたのならば、お客の支持も高まり、もう少し客数アップに寄与して然るべきであろう。しかし数字を見る限りその影響は軽微に見える。

 加えて、2025年2月末にシステムの導入を(設置可能な)全店で終えた、お届けサービス「7NOW」(セブンナウ)のお客への浸透が鈍いように見える。