乗客だけが味わえる絶景

 鞍馬線の魅力は「きらら」だけに留まらない。出町柳から20分ちょっと乗車した市原から次の二ノ瀬までの区間に、ハイライトが待っている。そこは通称「もみじのトンネル」と呼ばれており、約250mに渡っておよそ280本ものイロハモミジやオオモミジに囲まれているのである。

 赤やオレンジ、黄色に染まったモミジが車窓を覆い尽くし、鮮やかな色彩に染まるさまは、まさに絶景。紅葉のシーズンはこの区間で列車が徐行運転をしてくれるので、美しい景色をたっぷりと味わえる。しかもここは外から立ち入ることができないので、列車に乗っている人のみが経験できる特権でもある。

「もみじのトンネル」を走る普通列車。窓の額縁に燃えるような彩りが描かれる

 そんな「もみじのトンネル」だが、ボク的には夜に訪れることを推奨したい。なぜなら日没から21時頃まではライトアップがおこなわれているからだ。しかも徐行運転だけではなく、車内からよりいっそうこの景色を満喫できるよう、車内の明かりを消して真っ暗な状態で走るのである。

 確かに夜間では車内の照明が窓ガラスに反射して、外の風景がよく見えない。こんな粋なサービスをしてくれる鉄道会社が他にあるだろうか。闇に浮かび上がった色とりどりの紅葉がゆっくりと窓の外を流れる光景は奥ゆかしく、幻想的で感動を禁じ得ない。

 ちなみにそのようすを写真に収めたい場合には、スマホもカメラもライトやフラッシュが光らない設定にした方が良い。ライトやフラッシュの光が当たった場所が変に明るく写ったり、窓に反射したりしてしまうからだ。

 ただし車内は真っ暗なので、座席などにスマホやカメラを押し当ててなるべく固定した状態でシャッターを押そう。それでも写真がぶれてしまう可能性が非常に高いが、列車に揺られながら紅葉を眺めているという臨場感は間違いなく表現できる。

美しい色彩が印象的な二ノ瀬駅

 さて、トンネルを抜けて二ノ瀬に到着したら、こちらの駅で下車しよう。ホームには真紅に色づいた立派なモミジがライトアップされており、旅人を快く出迎えてくれている。

叡山本線には楕円がモチーフの観光列車「ひえい」が走っている。こちらも特別料金不要で乗車できる