大谷 達也:自動車ライター
ベントレーがコンチネンタルGTに至るまで
フルモデルチェンジを受けて4代目に生まれ変わった新型ベントレー・コンチネンタルGTの国際試乗会がスイスのアンデルマット周辺で開催された。
コンチネンタルGTは、幾重もの意味において、現在のベントレーにとってもっとも重要なモデルといえる。
1919年に創業したベントレーは、当初より高速での長距離移動を可能とするグランドツアラー作りを得意とする自動車メーカーだった。現在でこそ豪華でラグジュアリーなイメージがつきまとうベントレーだが、創業当時のモデルはいかにも頑強そうで、質実剛健なイメージを備えたモデルが中心だった。
そんなベントレーが快適性や豪華さを追究するようになったのは、1931年にロールス・ロイスに買収されて以降のこと。製品の基本技術をロールス・ロイスと共有するようになった結果、ロールス・ロイスがもともと持っていた静粛性や洗練された乗り心地がベントレーの各モデルにももたらされるようになったのである。
その後も長くベントレーはロールス・ロイス傘下の一ブランドとして活動を続けてきたが、1998年にフォルクスワーゲンがベントレーを買収するとともに、2002年以降はBMWがロールス・ロイスの親会社となった結果、両社は別々の道を歩むこととなる。
ここでフォルクスワーゲン傘下となったベントレーが目指したのは、ロールス・ロイスに買収される1931年以前の、“オリジナル・ベントレー”への回帰だったといって間違いない。すなわち、グランドツアラーとしてのスタミナや力強さを強調することが、新生ベントレーの目指すべき基本方針とされたのである。いっぽうで内外装の豪華さ、華やかさについては、ロールスロイスから学んだ手法を採り入れることとした。いわば、ベントレーとロールス・ロイスの「いいとこ取り」を、新生ベントレーは実践しようとしたのである。
そしてフォルクスワーゲンの力を得て開発された、およそ70年ぶりとなるベントレーのフルオリジナルモデルが、2003年にデビューした初代コンチネンタルGTだった。
W12ツインターボの強力なエンジンと全天候型駆動方式のフルタイム4WDが与えられたコンチネンタルGTは、どんなに遠い目的地であろうとも、速く、快適に、そして安全に到達することのできる、まさに現代のグランドツアラーとして誕生。やがてベントレーは4ドア・サルーンのフライングスーパーやSUVのベンテイガを追加していくが、それらもすべて、コンチネンタルGTの基本コンセプトを受け継いだモデルといっても過言ではない。
そんなベントレーにとって極めて重要な意味を持っているのが、4代目の新型コンチネンタルGTなのである。
コンチネンタルGTスピードに初めてV8エンジンを搭載
今回、デビューしたのは“スピード”と呼ばれるハイパフォーマンス・バージョンだが、そのボンネットに収められているのは、初代コンチネンタルGTから採用され続けてきたW12ではなく現代的なV8。これまでのコンチネンタルGTにもV8搭載モデルは存在したが、高性能版のスピードにV8を採用したのは4代目コンチネンタルGTが初めてである。
もっとも、排気量6.0リッターのW12を排気量4.0リッターのV8にただ置き換えただけではパフォーマンスの低下を免れない。そこでベントレーが選択したのは、V8エンジンにパワフルなプラグイン・ハイブリッド・システムを組み合わせることだった。この結果、新型コンチネンタルGTスピードは、従来型の635ps/900Nmを越える782ps/1000Nmを発揮。3.2秒の0-100㎞/h加速タイム、そして335km/hの最高速度を含め、3.7秒/333km/hだった従来型を大きく突き放したのである。
そのいっぽうで、プラグイン・ハイブリッドとすることで燃費を30%以上も改善。これをCO2排出量の削減に役立てるとともに、1回の給油(と充電)で走行できる航続距離を従来の662kmから859kmへと格段に拡大することにも成功したのだ。
そうしたハードウェアの大幅変革にあわせて、デザインも一新。1959年デビューのベントレーS2以来となる2灯式ヘッドライトをカタログモデルとして久々に復活させ、ベントレーが新時代を迎えたことを高らかに宣言したのである。
もうひとつ、新型コンチネンタルGTで特徴的なのは、クーペ・モデルとルーフの開閉が可能なコンバーティブル・モデルを同時に発売したことがある。これまでクーペに続いてコンバーティブルをリリースしていたベントレーにとって、2モデル同時発売は初の試みだという。