まだ進化するハンドリング
アンデルマット周辺でクーペとコンバーティブルに試乗してまず印象に残ったのは、パワートレインやデザインの変革もさることながら、シャシー性能が格段に進化した点にあった。ハンドリングの正確さをさらに向上させるいっぽうで、路面からのショックを的確に吸収するしなやかな足回りは、剛性が高いボディーがあって初めて達成できるもの。その意味でいえば、2チャンバー式エアサスペンションや2バルブ式ダンパーといった足回りの進化だけでなく、ボディー自体にも大きく手を加えることで実現したのが、新型の洗練されたハンドリングであり、乗り心地であるといえるだろう。
しかも、新型コンチネンタルGTは電子制御式4WDシステムや電子制御式アクティブアンチロールバーを先代から受け継ぐいっぽう、四輪操舵システムにくわえて後車軸に電子制御式リミテッドスリップデフを新採用。快適性を損なうことなくより機敏なハンドリングを実現する数々の電子デバイスを手に入れたのである。おかげで、アンデルマット周辺の九十九折りでも、2.5トンに迫る空車重を意識させない軽快なハンドリングを披露したのである。
もちろん、インテリアの仕上がりも従来型を上回るもので、凝った作りや優れた質感には大いに目を見張らされた。引き続きベントレーのもっとも重要な特質のひとつといって間違いないだろう。
ベントレーも完全電動化は見直し
ところで、今回の試乗会ではベントレーの電動化戦略に関する重大な発表があった。
彼らは2020年に発表した“ビヨンド100”のなかで、2030年までに完全なEVメーカーになることを宣言していたが、これを取り下げ、2030年の時点でもプラグイン・ハイブリッド・モデルを生産している可能性を示唆したのである。
これは、昨今のEV普及率の伸び悩みを反映した判断だろうが、そのいっぽうでフォルクスワーゲン・グループとしては一定の利益を確保するために強力なコスト削減を推し進める必要にも迫られているので、これを実現するためにも開発の効率化に舵を切ったとも考えられるだろう。
いずれにしても、グランドツアラーを標榜するベントレーにとって、現代のEVが逃れることのできない「足の短さ」はアキレス腱というべきもの。その意味でいえば、ハイパフォーマンス、CO2排出量削減、そして航続距離の長さなどをバランスよく備えた最新のプラグイン・ハイブリッド・テクノロジーは、現在のベントレーにとって最適解であるように思える。
全長×全幅×全高:4,895×1,966×1,397mm
ホイールベース:2,851mm
乾燥重量:2,459kg
エンジン:3,996cc V型8気筒 ツインターボ
エンジン最高出力:600PS(441kW) / 6,000rpm
エンジン最大トルク:800Nm / 2,000-4,500rpm
モーター最高出力:190PS(140kW)
モーター最大トルク:450Nm
システム最高出力:782PS(575kW)
システム最大トルク:1,000Nm
バッテリー容量:25.9kWh
トランスミッション:8段デュアルクラッチトランスミッション
駆動方式:四輪駆動
最高速度:335km/h
0-100km/h加速:3.2秒