印象派とその周辺の画家に注目

 さて、「モネ&フレンズ・アライブ」を体験。優雅でいて時に力強いクラシック音楽に導かれ、19世紀半ばから20世紀初頭にかけて活躍した画家の作品が次々に登場する。“印象派の父”と呼ばれるエドゥアール・マネ、印象派を代表する画家クロード・モネ、カミーユ・ピサロ、ピエール=オーギュスト・ルノワール、エドガー・ドガ、ベルト・モリゾ、メアリー・カサット、ギュスターヴ・カイユボット。さらにポスト印象派のポール・セザンヌ、点描画で知られるジョルジュ・スーラ、ポール・シニャック。ポスターを芸術の域に高めたアンリ・ド・トゥルーズ=ロートレック。

 画家の名前を聞いてぱっと思い浮かぶ作品は、ほぼ漏らすことなく登場する。次々と現れる名画を眺めながら、「あの美術館で見た」「あの展覧会に出品されていた」と思い出を振り返る時間が楽しい。

 作品もただ映し出されるだけではない。デジタルならではの“仕掛け”も用意されている。ネタバレになるのでプログラムの内容を詳しく書くことは控えたいが、イメージできるようにひとつだけ例を挙げて紹介したい。モネの代表作のひとつ《積みわら》。そこに雪がちらほらと舞い始め、やがて吹雪となり、スクリーンが白色で埋め尽くされる。その吹雪がおさまると、モネが一面の雪景色をとらえた人気作《かささぎ》が現れるという趣向。

 

これもアートの楽しみ方

館内には写真映えスポットも

 映像は1クール47分。実際の時間よりも短く感じ、まだ見続けていたいという気持ちになった。期待以上に、よく作り込んであると思う。

 上映作品以外も、丁寧に作り込まれている。登場する画家をひとりひとり詳しく解説したパネル展示や、19世紀から20世紀初頭の美術動向がよくわかる巨大年表があり、映像鑑賞後の復習に便利。10月にはパリのマルモッタン・モネ美術館から約50点が来日する「モネ 睡蓮のとき」(国立西洋美術館)があるので、そこに向けて予習しておくにもいい。

 会場には意外なほど若い世代の姿が多い。公式アンバサダーを務める阿部亮平さんの人気によるところなのかもしれない。きっかけはどうであれ、若者が多いのは素直にうれしい。アートへの入口は広いほどいい。それがリアルでも、バーチャルでも。