第一回印象派展が開催されてから今年で150周年。世界中で愛されてきた印象派の世界を冒険する没入型展覧会「モネ&フレンズ・アライブ 東京展」が日本橋三井ホールで開幕した。

文=川岸 徹 

コロナ禍で進んだアートの新しい見せ方

 コロナ禍の間、デジタルの力には本当にお世話になった。美術館に行きたいが、行くことができない。募る欲求を少しでも解消しようと、世界の美術館やギャラリー、アーティストのサイトを頻繁に訪ねた。そこに掲載されているのはデジタルデータ。「実物はオーラが全く違う。デジタルは所詮デジタルだ」と言われるが、これはこれで楽しい。というよりも、オンラインでここまでできるのかと何度驚かされたことか。

 美術館とGoogleが共同開発した「Google Arts & Culture」を使ってオランダ・アムステルダム国立美術館をバーチャル訪問すると、ストリートビュー機能を使って館内を歩いて巡る気分を味わえた。リアルな館内と違わぬ位置に、レンブラントやフェルメールの名画が飾られている。もっと近くで鑑賞したいと思い、作品の前まで近寄ると、絵具の盛り上がり具合や絵筆のタッチまで確認可能。デジタルって、すごい。

 コロナ禍が収まり、美術館は以前の状況にほぼ戻ったが、「アート×デジタル鑑賞」はアート作品の楽しみ方のひとつとして定着しつつある。しかも進化のスピードが恐ろしいほどに速い。

 

没入型デジタル展覧会とは?

 今、従来の枠を越えた新しいアート展として人気を集めているのが「没入型デジタル展覧会」。360度すべての壁面と床面をシームレスにつなぎ合わせ、アート作品をベースにして作り上げた映像を投影。音楽や効果音、光、香りなどの要素を加えて、来場者に圧倒的な没入感を体験してもらおうとするプログラムだ。

 この新しいエンタメに世界各国の企業が参入し、魅力的なプログラムを次々に生み出している。今のところ呼び方はまちまちで、「没入型デジタル展覧会」「イマーシブミュージアム」「体感型デジタルアート劇場」などと独自に銘打っている。

 今回紹介する「モネ&フレンズ・アライブ」は、オーストラリアのメルボルンに本社を置くGrande Experiences社の企画制作によるもの。日本に上陸する2つめの作品で、ちなみに第1弾の「ゴッホ・アライブ」は世界100都市を巡り、900万人を動員。現在、101番目の都市・福岡(福岡三越ギャラリー)で9月13日まで開催されている。