以前のアルトゥーラから変化あり!
試乗の舞台となったのは、岩手県の安比高原周辺に広がる壮大なワインディングロードが中心だった。
走り始めてすぐ、これまでに乗ったどのアルトゥーラよりも乗り心地が滑らかで、ゴツゴツした感触があまり伝わってこないことに気づいた。とりわけ、2022年に行なわれた国際試乗会で認められた「軽く跳ねる」ような感触が薄れ、マクラーレン特有のどっしりとして落ち着いた乗り味に感じられた点が印象的だった。
実は、アルトゥーラ・スパイダーはサスペンションダンパーに取り付けられた減衰力可変用バルブを改良することで応答速度を改善。さらにこれを制御するコンピューター系の性能を最適化することで、ハンドリングと乗り心地のバランスがさらに向上したという。私が感じ取った変化も、こうした技術陣の努力が実を結んだ結果だったと考えられる。
いっぽうで、安比高原周辺の荒れた路面をコンフォート・モードで走っていると、ときおりボディが軽く煽られることがあった。といっても、ハンドリングに悪影響をあたえるほどではないものの、もうちょっと落ち着きが欲しいと感じたのも事実。そこでスポーツ・モードに切り替えると、こうした挙動がしっかり抑え込まれ、より安心してコーナリングを楽しめるようになった。
やはり孤高のスーパースポーツ
それにしても印象的なのは、カーボンモノコックがもたらす優れた剛性感である。それは、心理的に好ましい影響を与えるだけでなく、サスペンションの正確な動作にも寄与することから、荒れた路面にも的確にタイヤが追随するロードホールディング性、それに正確なハンドリングなどを生み出し、不安定な挙動を招きにくい。その分、ドライバーは安心してコーナリングに集中できるというメリットをもたらすのだ。
さらには、車両全体の重心が低く、重量物をできるだけ車両の重心点に近づけるレイアウトを実践したことで、車両の慣性モーメントが小さくなり、結果として限界的なコーナリングでもドライバーの意思に的確に反応するハンドリングに仕上がっている。
まさにドライビング・プレジャーのために生まれてきたスーパースポーツカーといって間違いないだろう。
そして、アルトゥーラ・スパイダーの洗練された印象は、クーペ版のアルトゥーラからも同じように感じ取ることができた。もちろん、アルトゥーラもデビュー当時から乗り心地が快適でハンドリングの精度も高かったが、2025年モデルになって、その洗練の度合いがいちだんと高まったように感じられたのだ。
スペックやスタイリングだけでいえば、アルトゥーラとよく似たモデルはほかにもあるかもしれない。しかし、どれだけ純度の高いドライビングが楽しめるかという点において、マクラーレンは引き続き孤高の存在であるように私には思える。
全長×全幅×全高:4,539×1,913×1,193mm
重量(DIN):1,560kg
エンジン:2,993cc ドライサンプ 120° V6 ツインターボ
最高出力:700ps(515kW)/ 7,500rpm
最大トルク:720Nm / 2,250rpm
バッテリー容量:7.4kWh リチウムイオン
トランスミッション:8段デュアルクラッチトランスミッション+E-リバース
0-100km/h加速:3.0秒
価格:3650万円(税込)