サイバー攻撃の脅威が高まる中、経営者やCISOはどのように向き合うべきなのか。そのヒントを示すオンラインイベント「NEC Cyber Day’24春 いま解き明かす。インシデントから見えてくるセキュリティマネジメント」が2月28日に開催された。当日は、NECサイバーセキュリティ戦略統括部で統括部長を務める淵上真一氏をモデレータに、2つの対談が行われた。
対談相手の一人目は、プリファードネットワークスのセキュリティアーキテクト・シニアアドバイザーで、日本ネットワークセキュリティ協会(JNSA)副会長も務める高橋正和氏。二人目は、NECグループ自身のセキュリティを担う、CISO統括オフィス長の田上岳夫氏だ。2つの対談から、インシデント(事象)を防ぐため、起きたときのために必要な心構えを明らかにする。
経営層と現場の「言語感覚」の壁を乗り越える方法
最初に登場したのは、プリファードネットワークス セキュリティアーキテクト・シニアアドバイザーであり、日本ネットワークセキュリティ協会(JNSA)副会長でもある高橋正和氏。
冒頭、モデレータの淵上氏は、高橋氏が筆頭共著者であるCISO(Chief Information Secirity Officer)のための『CISOハンドブック 業務執行のための情報セキュリティ実践ガイド』(技術評論社)を「社交辞令で言っているわけではなく本当に愛読書」にしていると挙げた。その後に、経営者は経営リスクの1つとして、セキュリティインシデントをどう捉えるべきかを高橋氏に質問した。
「経営者はセキュリティリスクの存在を認識できていても、インシデントの具体化ができていないと思います。しかし、ITではなく事業の目線で見れば、何が起きてほしくないことなのかが見えてくるはずです。その起きてほしくないことが実際に起こる可能性はあるのか、防ぐにはどうすればよいのかを確認する作業が、経営者のすべきことになるでしょう」(高橋氏)
セキュリティに限らず、ITに関して経営層と現場の担当者間で起こるのが意思の齟齬(そご)だ。例えば、セキュリティ担当者が経営者に対し「現状で自社はISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)の規格に反しています」と説明しても、「じゃあ、直しておいて」と言われるだけで終わってしまう。
「そこで、情報システム部長などの役職の方が、経営者に歩み寄る姿勢を持つことも組織として重要になります。ISMSの規格にそぐわないならば、『侵入によってシステムが停止するかもしれません。情報が漏えいするかもしれません』と分かりやすい言葉で寄り添っていくことが大切です」(高橋氏)