文=松原孝臣 撮影=積紫乃

今は13人

 昨年12月下旬に行われたフィギュアスケートの全日本選手権で、中学1年生のスケーターが脚光を浴びた。この大会では最年少出場ながら4位、大健闘を見せた上薗恋奈だ。中学1年生以下で表彰台に上がったのは1980年の伊藤みどりの後いなかったことを考えても、特筆に値する。

 得点を待つ上薗のかたわらに、穏やかな笑顔を見せるコーチがいた。樋口美穂子である。

 名門である「グランプリ東海クラブ」で多くのトップスケーターを含む選手たちを長年にわたり指導してきた樋口は、2022年3月15日、独立を発表。新たに「LYSフィギュアスケートクラブ」を名古屋市内に創設し指導にあたっている。その中から、早くも大会で活躍する選手を輩出したことになる。

 クラブを立ち上げてまもなく2年。今日までどのように歩んできたのか。

 スタート時点で生徒は「4、5人くらい」。ささやかな発進だった。

「今は13人ですね。いちばん下は小学3年生、いちばん上は(中京)大学1年生の河辺愛菜さんです」

 河辺は2022年北京五輪に出場。LYS創設とともに前の所属先から移ってきた選手だ。

2023年12月22日、全日本選手権、女子シングルでSPを終えた後の河辺愛菜(左)と樋口美穂子コーチ 写真=西村尚己/アフロスポーツ

 生徒の加入の仕方はそれぞれだったと言う。

「ホームページを見て連絡をくれたり、つてをたどってきたり。おそらくは私が教えている選手を見たりしてやってみたいと思う子がいれば、『先生の振り付けでやってみたい』という動機もありました」

 創設してからの日々を振り返りつつ、こう語る。

「今はいい感じでやれているなと思っています」

「今は」と言う。いちから立ち上げてのことだったから簡単な道のりではなかった。

「そのときそのときにぶつかったことに対して対応してきた感じでしたね。まずは練習環境かな。河辺さんは中京のリンクがあったので心配はなかったんですけれど、他の子たちの練習する場所を確保するのがまず大変だったかな」

 グランプリ東海では拠点とするリンクがあったが、LYSは練習する環境そのものから整える必要があり、近隣のスケート場を借りながら行ってきた。現在は邦和スポーツランド、モリコロパークを利用している。両リンクに使用許可を申請しつつ、スケジュールを組んでいく必要がある。

「人数が少ないので動きやすいというのもありましたし、いろいろな先生方も助けてくださったりしました。モリコロはけっこう練習できているので助かりました。自分たちだけの貸し切りも入れていただいたりしています」