文:山口 幸一

ニュージーランドを北から南へ

フェラーリ初のSUVとして世界中から注目を集めるプロサングエ。実はフェラーリ自身は同車がSUVであるとは謳っていない。

2022年8月、京都を代表する古拙「仁和寺」で開催されたジャパンプレミアムの際、フェラーリ ジャパン社長(当時)のフェデリコ・パストレッリ氏に、プロサングエはSUVなのか質問したときにも、氏は間髪入れずに「ノー」と答えた。

パストレッリ氏曰く、プロサングエはあくまでもスポーツカーであり、これまでのモデルと変わらぬフェラーリのDNAを持っているからだそうだ。そう力強く語ると、「ただし」と続けた。

「4ドア 4シーターの4WDということで、従来のモデルとは少し異なる特徴があるのも確かです。大人4人がゆったりと乗車でき、どんなコンディションの道でもフェラーリのパッションを堪能できる新しいモデルなのです」

パストレッリ氏の言葉は、まさにプロサングエの特長を言い得ている。フェラーリが開催した、プロサングエでニュージーランドを北から南へと縦断する国際試乗会に参加して、そう思った。

北島と南島という2つの主要な島からなる南西太平洋の国、ニュージーランド。南北に連なるこれらの島を縦断する約1600kmの道のりを5区間に分け、世界各国から参加したジャーナリストやプレスが、リレー形式でプロサングエを駆る。

こうしたグランドツーリングの第1レグ、北島北部に位置するニュージーランド最大の都市、オークランドから同島中心部の観光都市、タウポへと至る約470kmの道のりを、欧州やアジアから集結した僕ら第1走者となるプレス陣は、2日間をかけて走り抜ける。

スーツケースを積み込んで

オークランドに到着した翌朝、ホテルのクルマ寄せでいよいよプロサングエのキーが委ねられた。

まずは電動式のリアハッチを跳ね上げ、スーツケースを積み込む。各車2人1組だから、2人分の荷物を載せることになる。

驚くべきことにプロサングエのラゲッジルームは、ミディアムサイズ2つ、キャリーオンできるサイズ1つ、計3つのスーツケースを飲み込んだのだ。この辺りからも、プロサングエが従来のフェラーリとは一線を画すモデルであることが分かる。

昨日、スコールのごとき激しい雨に見舞われたこの街は初夏の暖かな陽光に包まれ、プロサングエという珠玉の4ドアスーパーカーを駆って、ニュージーランドを縦断する私たちのグランドツーリングの幕開けを祝福しているかのようだった。

高揚する気持ちとともに、第1レグの1日目のゴールである海辺の街、タウランガを目指し、シャープなノーズを南へと向け走り出した。

街のシンボルであるスカイタワーが天にそびえ、南半球で一番高いこのタワーを囲むように近代的なたたずまいのビルが林立する。

湾に面したマリーナには、ラグジュアリーなボートが肩を並べ、「シティ・オブ・セイルズ(帆の街)」の異名を持つオークランドならではの風景が広がる。

洗練された都市とラグジュアリーなマリンリゾートが融合したかのような瀟酒な街並みに、プロサングエの美しい4ドアボディはひときわ映えていた。