文=酒井政人

2024年1月2日、第100回箱根駅伝、往路2区を走る鈴木芽吹(駒大) 写真=日刊スポーツ/アフロ

トップ中継した駒大の主将は涙した

 第100回箱根駅伝、鶴見中継所を最初に飛び出した駒大・鈴木芽吹(4年)は快調に突き進む。かねてから熱望していた花の2区。4年目にして初の挑戦にいつも以上の高揚感があっただろう。2年連続の「駅伝3冠」を目指すチームの主将として〝絶対に負けられない戦い〟でもあった。

 10㎞を28分09秒で通過して、権太坂(15.2㎞地点)の個人タイムは堂々のトップ。後続との差を広げていたが、終盤は猛追される。そして戸塚の壁に苦しめられた。

 それでも追いかけ続けた先輩・田澤廉(現・トヨタ自動車)が前年マークしたタイムを14秒上回る1時間06分20秒で走破。藤色のタスキを真っ先につなげた。しかし、区間賞に13秒届かず、レース後は涙があふれた。

「本当に憧れの2区で、みんなが自分の名前を呼んで応援してくれました。走っている最中は幸せでしたね。調子も良くて、ペース的にも悪くなかったんですけど、事実として負けている。タイムは勝負の二の次だと思っているので、本当に悔しいです」

 

戸塚の坂に朝日が昇った

戸塚中継所、3区・太田蒼生(右)の元へ駆ける2区・黒田朝日(ともに青学大) 写真=スポニチ/アフロ

 今回、花の2区を制したのが青学大・黒田朝日(2年)だった。

 トップ駒大と35秒差の9位でタスキを受け取ると、腕時計をしない黒田は自分のリズムで刻んでいく。レース前半は大集団となったが、他の選手や通過タイムは気にしなかったという。個人タイムは横浜駅前(8.2㎞地点)が13位、権太坂(15.2㎞地点)が7位。そして戸塚の坂で圧倒的な強さ発揮した。

「自分自身、上りが結構得意なので権太坂から徐々にペースを上げていくイメージを持って走りました。ラスト3㎞を切ってから駒大が見えてきたんです。1秒でも差を縮めたいという気持ちだけで走りました。最後の方まで脚がすごく動いてくれたので、理想の走りができたかなと思います」

 権太坂で1分05秒差あった駒大・鈴木に急接近。最後は13秒まで詰め寄り、区間歴代4位の1時間06分07秒で区間賞に輝いた。

「区間賞は全然意識していなくて、もう無我夢中で走りました。1時間6分台を出せればいいんじゃないかなと思っていたので、タイムは予想以上でしたね。監督に声をかけられているのかよく分かっていなかったんですけど、自分一人になってから聞こえてきた『戸塚の坂に朝日が昇る』という言葉が印象的でしたね」