「世界の扉」に手をかけた早大・山口

 青学大から16秒遅れでスタートしながら、黒田に追いつき、15㎞付近まで食らいついたのが早大・山口智規(2年)だ。当初は持ち味のスピードを生かせる「1区もしくは3区」を希望していたが、チーム事情からエース区間に抜擢されたという。

「2区を言い渡されたのは3週間前くらいですね。そこからは覚悟を決めて、(高校時代の先輩である)相澤晃さんの動画を何回も観たんです。昨日も観てから寝たら、ちょっと興奮しちゃって、あまり寝られなかったですけど(笑)」

 山口は10㎞を設定していた「28分25秒」より速く通過すると、終盤も粘り強かった。「1時間06分55秒~1時間07分30秒」の設定タイムを大幅に上回る1時間06分31秒(区間4位)で走破。レジェンド・渡辺康幸が保持していた早大記録を塗り替えると、12位から4位まで順位を押し上げた。

「終盤の上りも自分が思った以上に走れたので、期待以上のレースができたかなと思います。タイムの面でもいい意味で期待を裏切れた。ラスト1㎞の声かけで、『世界の扉を開くぞ』と花田(勝彦)さんに言われて、無我夢中で走りました。世界を視野に向けてやっていきたいので、今回の箱根が良いきっかけになるのかなと思います」

 

東農大・並木は地元を快走

 10年ぶりの出場となった東農大のエース・並木寧音(4年)も堂々としたレースを披露した。盟友・高槻芳照(4年)から9位でタスキを受け取ると、青学大・黒田、早大・山口らと互角に渡り合う。1時間07分03秒の好タイムで駆け抜けて、チームを6位まで引き上げた。

「目標は1時間7分台だったので、その目標は十分に達成できました。2年前の経験を生かした走りができたかなと思います」

 並木は第98回大会に関東学生連合の選手として2区に出場。1時間08分16秒(区間13位相当)で走っているが、今回は母校のタスキが胸に輝いていた。スーパールーキーと騒がれた前田和摩が2区の候補に挙がるなか、並木は地元を走るエース区間を熱望してきた。

「2区は前田が厳しくなって自分に回ってきましたが、ずっと準備をしてきたのでプレッシャーもなく、むしろ出番がきて有難いと思いました。4年生として『前田だけじゃない』というところを見せられたのかなと思います」