李禹煥の言葉が心に響く

毛利悠子《そよぎ またはエコー》2017年(部分) 「札幌国際芸術祭2017」展示風景 写真:佐々木育弥

 坂本と縁の深い作家を紹介する展示室では、まず毛利悠子《そよぎ またはエコー》(部分を「坂本龍一トリビュート展」のために再構成)が目に留まった。グランドピアノを用いたインスタレーション作品で、自動演奏によってピアノから奏でられる坂本龍一作曲のメロディが美しい。

Dumb Type + Ryuichi Sakamoto《Playback 2022》2022/23年

 ダムタイプ《Playback 2022》はアナログレコードを使ったサウンドインスタレーション。坂本龍一のディレクションにより世界各地でフィールド・レコーディングされた音源を基に16枚のレコードを制作。これら16枚のLPレコードがアート作品として並ぶほか、会場では特別に未発表音源を収めた17枚目のディスクを聴くことができる。

「坂本龍一トリビュート展 音楽/アート/メディア」展示風景 李禹煥《祈り》2022年

 さらに李禹煥の作品も見逃せない。《祈り》は李が坂本龍一の病気平癒を祈って描いたドローイングで、生前の坂本に贈られたという。裏面に書かれた李から坂本へのメッセージが心に響く。

「坂本龍一さん
このdrawingは 時計まわりと 反対に描いたものです
従って 見る時も左回りに目を回しながら見ます
そうすれば力が湧いてきます
時々10分程やってみてください
李禹煥 2022.8.15」

 坂本龍一の音楽、芸術、そして人間としての素晴らしさはこれからも愛され続ける。そうとはわかっていても、坂本さんの逝去は、やはり寂しい。

Photo by Neo Sora ©2022 Kab Inc.