遺された膨大なデータを未来に受け継ぐ

「坂本龍一トリビュート展 音楽/アート/メディア」展示風景 Dumb Type + Ryuichi Sakamoto《Playback 2022》2022/23年

 展覧会のキュレーションを務めたのは、ICC主任学芸員の畠中実と、日本を代表するクリエイティブチーム「ライゾマティクス」の真鍋大度。畠中実は展覧会の開催について、このように語る。

「ICCの活動の節目にはいつも坂本龍一さんがいた。坂本さんが亡くなり、絶対に何かやらないと申し訳ないと思った。この展覧会は、一般的にイメージされる追悼展とは違う。過去の代表作を網羅して紹介するのではなく、坂本さんのアート作品の中にある本質をクローズアップし、坂本さんの活動を今後どのように受け継いでいけるのかを考察するような内容にしたかった」(畠中実)

 展覧会は大きく2つのブロックで構成されている。1つは坂本龍一が遺した演奏データを使って再構築した作品群、もう1つは坂本と縁の深いアーティストたちによる作品群を紹介するブロックだ。

坂本龍一+真鍋大度《センシング・ストリームズ-不可視、不可聴》2014年 「札幌国際芸術祭2014」展示風景 撮影:木奥恵三 提供:札幌国際芸術祭実行委員会

 データを使用した作品群の冒頭を飾るのは、坂本龍一と真鍋大度の共作《センシング・ストリームズ 2023―不可視、不可聴》。アンテナによって収集した電磁波のデータを、ヴィジュアルとサウンドに変換したインスタレーション作品で、もともと「札幌国際芸術祭2014」で発表されたものだ。

「その作品を本展開催に合わせてアップデート。坂本さんは演奏や映像など、膨大なデータを遺しています。それを“もし坂本さんがいたら、こうやって活用しただろう”というふうに考えながら、アップデートの作業を行いました。遺された価値あるデータを活用することが、敬愛する坂本さんへのトリビュートになると考えたんです」(真鍋大度)