「カリブの真珠」と呼ばれるキューバの首都ハバナ。メキシコ湾に臨むカリブ海最大の港湾都市の旧市街(オールド・ハバナ)の中心に、キューバを愛した文豪ヘミングウェイの常宿があります。
取材・文=杉江真理子 取材協力=春燈社
植民地時代の面影を残す旧市街
キューバ島とその周囲にある約1500のサンゴ礁の小島群からなる国キューバ。首都のハバナはキューバ島北西部に位置し、1519年、スペイン人によって建設された街です。かつては「カリブの真珠」「カリブの女王」と謳われ、白い建物が多く並ぶ植民地時代の面影が残るスペイン風の街でした。
ハバナはスペインの植民地として発展しますが、19世紀半ばにはスペインからの独立運動が活発化し、1895年に独立戦争が勃発します。これにアメリカが介入したことでアメリカとスペインの戦いとなり、1902年、アメリカの勝利によってキューバは独立しました。その際にハバナが首都になりました。
しかしここからスペインに代わってアメリカの支配が始まります。1959年にキューバ革命によって革命政権が樹立するまで、支配が続いたのでした。
このような歴史から、オールド・ハバナには17世紀~18世紀に建てられたスペイン・バロック様式の建築や新古典主義の建物、アメリカから新しく入ってきたモダニズム建築、さらにはアールデコといったさまざまな様式の建築群が細い道沿いに立ち並んでいます。その数3000以上という美しい街並みは、1982年、4つの要塞群とともに文化遺産に登録されました。
代表的な建造物を紹介しましょう。1555年につくられたハバナ大聖堂とも呼ばれる「サン・クリストバル大聖堂」は、17世紀の石畳が敷き詰められたカテドラル広場にあります。創建当時から多くの信仰を集める大聖堂でしたが、現在の建物は1704年に再建されたもので、波打つようなファザードが特徴のキューバ・バロック建築の傑作とされています。
正面には大きな二つの塔があり、右側の塔には重さ7tの鐘が吊り下げられています。内の床には多色大理石、壁には微妙に色が異なる石が使われています。
「アリシア・アロンソ・ハバナ大劇場」は1838年に建造されたバロック建築の劇場です。キューバ国立バレエの本拠地で、国際バレエフェスティバルのほか、オペラやジャズのコンサートなどにも使用されています。夜にはライトアップされ、その幻想的なたたずまいは、観光客にも人気のスポットとなっています。
劇場のすぐ近くにあるのが、カピトリオ(旧国会議事堂)です。ドームのある白一色の外観は、ワシントンD.Cにある連邦議会議事堂をモデルに建てられました。アメリカ支配の真っただ中、1929年に建てられたため、連邦議会議事堂に似せた建造物となっています。キューバの歴史を知るうえでも貴重な建造物です。
また、ハバナの街には1959年のキューバ革命の英雄チェ・ゲバラの肖像画があちこちの壁面にあったり、新市街の革命広場に面した内務省のビルに大きな壁画があったり、お土産屋さんには色とりどりの「ゲバラTシャツ」が並んでいたりと、今もなお、ゲバラは大きな存在感を残しています。
旧市街の中心にある革命博物館は、1920年に大統領官邸として建造された、歴代大統領の官邸でした。アーチと回廊が建物の周囲を囲むスパニッシュ・コロニアル様式の美しい建物です。革命後に革命博物館となり、チェ・ゲバラやフィデル・カストロら革命軍に関する資料や写真、武器などを展示、キューバ革命の様子を詳しく知ることができます。