ウィーン郊外にあるシェーンブルン宮殿は、マリア=テレジア治世の1749年に完成し、200年以上にわたってハプスブルク家の宮殿として使用されます。鮮やかな黄色の宮殿は、1996年、庭園とともに世界遺産の文化遺産に登録されました。
取材・文=杉江真理子 取材協力=春燈社 写真提供:ウィーン市観光局、オーストリアトレンドホテル
バロック様式の外観と絢爛豪華な内部
首都ウィーン郊外にあるシェーンブルン宮殿は、オーストリア最大の宮殿です。もともとはオーストリア大公マクシミリアンが建てた王室狩猟館でしたが、1683年にトルコ軍に破壊されたことから、皇帝レオポルトがその跡に「フランスのヴェルサイユ宮殿を凌ぐ夏の離宮を」と、建立を命じたものでした。
建築家フィッシャー・フォン・エルラッハの設計によって1695~1744年に造営され、同時に庭園も整備されます。その後、ニコラウス・パカッシイによって構造に部分的な修正が加えられ、インテリアなど最終的な形態が整えられたのはマリア=テレジア治下の1749年でした。
オーストリア・バロックを代表する建築物でしたが、マリア=テレジアの時代に現在のロココ式宮殿の姿になりました。シェーンブルンは「美しい泉」という意味です。
建物の色はマリア・テレジア・イエローと呼ばれる鮮やかな黄色で、外観はシンプルですが、内部にはダニエル・グランが描いた装飾壁画をもつ礼拝堂、ロココ様式やシノワズリーの豪華な装飾を誇る皇帝の部屋があります。庭園には世界初の動物園もつくられ、今もジャイアントパンダやコアラなどの動物がいます。
1996年、シェーンブルン宮殿は、建物 (グロリエッテ、ローマ遺跡など) や彫像を備えた広大なバロック様式の庭園とともに、世界遺産の文化遺産に登録されます。
シェーンブルン宮殿の見どころは、当時の状態で保存された美しい内装でしょう。もっとも豪華な部屋は、大広間グローセ・ギャラリーです。長さ40m、幅10mもの広さを誇る大広間で、イタリア人画家グレゴリオ・グリエルミの天井画やシャンデリアは必見でしょう。皇帝たちの部屋はとても繊細な造りで、大広間との違いもぜひ味わってください。
このほか宮殿には1400もの部屋があり、現在では3階から4階が賃貸住宅になっているので、住むこともできます。
東西に約1.2km、南北に約1kmという広大な敷地には「皇太子の庭園」「地下室の庭園」「日本庭園」など、さまざまな庭園があり、カフェやレストランも併設されています。歩き疲れたら、ぜひ立ち寄ってみてください。
また、「皇太子の庭園」を進んだところにあるオランジェリーでは、モーツァルトやシュトラウスの曲を中心としたコンサートも開かれます。