シルクロードの要衝として繁栄したトルコの山間の町サフランボル。1994年、世界文化遺産に登録された旧市街は、商人たちが泊まったキャラバンサライや、築100年以上という伝統家屋コナックなど、オスマン帝国時代から続く古き良きトルコの街並みがそのまま残っています。
取材・文=杉江真理子 取材協力=春燈社
700年以上にわたり繁栄したシルクロードの街
トルコの首都・アンカラからは北にバスで約3時間、イスタンブールからは東にバスで約6時間のカラビュック県山間の渓谷に、サフランボルという小さな町があります。町の名は、かつて香辛料などに使われるサフランが群生していたことが由来です。
次々と支配者が代わったこの土地は、11世紀にトルコが支配するようになると、シルクロードの要衝として繁栄しました。オスマン帝国時代の14世紀から17世紀にかけては東西貿易の要衝として、その後も交易の中継都市として重要な町となります。
とくに17世紀は隊商(キャラバン)を組んでやってくる商人たちのための隊商都市として、町は栄華を極めます。今も残る白壁に赤い屋根の建物は商人たちが泊ったキャラバンサライの跡です。
トルコ伝統建築の古民家コナック
トルコの伝統家屋は、トルコ語で「邸宅」を意味する「コナック」といい、サフランボルには約1000軒あります。
サフランボルの中流以上の家庭では、夏用と冬用で2軒の家を所有し、りんごの花が咲く5月頃に避暑地のバーラル地区にある「夏の家」に移り、本格的な冬が始まる11月までにチャルシュ地区にある「冬の家」に戻るという生活をしていました。
夏の家と冬の家の見分け方は、ソファが置かれている場所です。バルコニーにあるのが夏の家、屋内にあるのが冬の家です。
また、トルコの家には廊下がなく居間の周りに部屋があるという、独特の造りが特徴です。サフランボルでは、親子三世代に加え親戚も一つ屋根に暮らす大家族だったため、どの家にも居間の周りに6〜8部屋ありました。
コナックでの昔の暮らしぶりは、中佐の家を意味する「カイマカムラル・エヴィ」という博物館で知ることができます。19世紀初期にメフメト・エフェンディ中佐という人が建てたコナックで、人形を使って当時の生活を再現しています。