劇場最大の見せ場

 さて、そんなこだわりの建築家・村野藤吾の世界観が爆発していると言っても過言でない、この劇場の最大の見せ場は、なんといっても客席内部である。

《日生劇場》劇場内

 扉を開け、一歩内部に足を踏み入れるとその目の前に広がるのは、うねるように波打つ有機的な曲面で構成された壁や天井。ここは地底の洞窟か?はたまた巨大鯨の胃袋の中か??そのなんとも妖艶で魅惑的な空間に誰もが息を呑むであろう。

 さらに、天井に目を凝らすとそこには2万枚もアコヤ貝の貝殻が散りばめられており、また、壁面には、彩鮮やかな特製のガラスモザイクが張られ、より一層幻想的で神秘性を帯びた雰囲気を創り出している。このような唯一無二の圧巻の空間を生み出した村野藤吾という建築家の独創性にはただただ感服する。

《日生劇場》劇場内天井

 これら以外にも、この《日生劇場》には、受付カウンターから扉の取手、照明から椅子やテーブルに至るまで、これでもか!というほど、村野藤吾のこだわりを満喫することができるのだが、これだけ自由に思う存分デザインをさせてもらえる村野藤吾という建築家に尊敬と羨望を感じると同時に、それを依頼した(許容した?)クライアントにも敬意を表したくなる。