文・写真=山﨑友也 取材協力=春燈社(小西眞由美)

烏帽子岳と御竈門山をバックに走る南阿蘇鉄道のトロッコ列車「ゆうすげ号」

2023年7月15日に奇跡の復活

 九州のど真ん中、阿蘇のそよ風を浴びながらのんびりと走る南阿蘇鉄道。雄大な自然を感じられることで人気の高いこの路線は、今年の7月15日に奇跡の復活を遂げたことでも話題になった。

 2016年に起きた熊本地震によって線路や駅、トンネルなど施設の大部分が甚大な被害を受けたため、一時は全線運休を余儀なくされていた。その後7月には比較的被災の少なかった中松~高森間で運行を再開したものの、全線復旧までのめどは全く立たない状況だった。

 しかし復活へ向けての思いは諦めることなく、沿線自治体や国の協力はもちろんだが、なにより全国のファンや企業から多くの支援と励ましや応援を受け、7年3ヶ月ぶりにようやく南阿蘇鉄道は全線運転再開へとこぎ着けたのだ。

 そんな南阿蘇鉄道の代名詞ともいえるのが、トロッコ列車の「ゆうすげ号」。そもそもトロッコとは荷物輸送用の屋根のない貨車のことで、「ゆうすげ号」の車両もその無蓋車と呼ばれる貨車を改造して作られた。

 晴れた日には窓を使用しないため高原の爽やかな空気が車内を駆け巡り、阿蘇五岳や外輪山など迫力抜群の景色を五感で味わえる。これがなにより「ゆうすげ号」が大人気の理由である。ちなみに愛称の「ゆうすげ」とはユリ科の高山植物で、沿線で夏に見られる黄色い花のこと。