100年に一度の大変革の時代と言われる自動車業界。中でもガソリン車からBEV(電気自動車)への移行は、ゲームチェンジと言われるほど業界を揺さぶる。てんとう虫の愛称を持つスバル360で日本のモータリゼーションを切り開き、2017年に創業100年を迎えたSUBARU(スバル)も、この大変革に無縁ではいられない。2023年8月には「2030年に販売全体に占めるEVの割合を50%に高める」という新たな目標を発表し、ハイブリッド車とBEVを合わせて40%とした従来の目標から大幅にアクセルを踏み込んだ。さらにはデータ活用によって新たな価値づくりも明言。同社のロゴである六連星はデジタルでどう輝きを増すのか。キーマンに聞いた。
■SUBARUらしさを大切にすることで変革期を乗り越える
■目指すチャレンジは「モノづくり革新」と「価値づくり」
■SUBARUの強みを信じ、強い覚悟でチャレンジしていく
SUBARUらしさを大切にすることで変革期を乗り越える
――自動車業界はたいへんな変革期を迎えています。SUBARUは、どうやってこの大波を乗り越えるのでしょうか。
阿部一博氏(以下敬称略) いろいろ方法や考え方があると思いますが、私は「SUBARUらしさ」こそが変革の時代を乗り越えるための大きな強みになると考えています。
SUBARUらしさとは何か。水平対向エンジンによる低い重心や4輪駆動による安定した走り、最近では運転支援システムのアイサイトなど、特徴的な技術や機能がSUBARUらしさと思われている方も多いと思います。これらに共感いただきSUBARU車を購入いただいていることは大変ありがたいことです。
ただ私は、技術や機能は手段だと思っていて、もう少し根本的な部分を意識しています。それは車を使う人々の人生に寄り添って安心で愉しい車を作るという考え方、そしてそれを実行すること。この考え方と行動こそがSUBARUのクルマづくりであり、それを愚直に貫くことがSUBARUらしさと私は捉えています。
こうした理解は35年前に当社内で作成したSUBARU IDENTITYという書物にある「持てる技術を誇るのではなく、いかに人に貢献できたかを誇りたい」という一節とも共通しています。数年前、私は、SUBARU IDENTITYの中にこの一節を見つけた時、自分の想いとまったく同じであることに感銘を受けました。
そしてSUBARU車をご購入いただいたお客様に話を聞いたりSNSなどを見たりしていると、ある特徴を感じます。それは、自分たちの笑顔を大切にしつつも周囲の方の笑顔も大切にするといった利他的な行動を取る方が多いということです。これは人々の生活に寄り添って人々の生活を豊かにしようとする当社のクルマづくりに、お客様が共感した結果ではないかと思っています。
SUBARUはこうした共感をもっと深めたい。そのためにお客様や販売店の皆さんと一緒に、地域社会をより良くする活動にも力を入れています。
米国では「The Subaru Love Promise」というビジョンの基、15年以上にわたり、地域の困っている人を助ける、ペットを助ける、人々の学びを助けるといったことを実践しています。SUBARU車を購入頂いたお客様と一緒に行っている寄付も15年以上毎年行っており、累計2億5000万ドル以上の寄付を達成しています。SUBARUらしいクルマづくりを基礎として築き上げるお客様との深い関係は、他社にはないSUBARUらしさだと私は考えています。
人に寄り添うクルマづくりと、そこで得るお客様の共感を一緒に育てて笑顔を作る。このSUBARUらしさを強みにすれば、たいへんな変革期も乗り越えられると考えています。