左から織田信長像、豊臣秀吉像

 歴史上には様々なリーダー(指導者)が登場してきました。そのなかには、有能なリーダーもいれば、そうではない者もいました。彼らはなぜ成功あるいは失敗したのか?また、リーダーシップの秘訣とは何か?そういったことを日本史上の人物を事例にして考えていきたいと思います

信長に仕える前の秀吉は?

 豊臣秀吉は、貧しい家の出で、容姿も冴えなかったが、織田信長に仕え、武功を重ね、ついには織田家の重臣として、重用されるにまでなりました。信長に仕える前の秀吉に関する逸話が、戦国時代に来日したスペイン人貿易商人のアビラ・ヒロンの著作『日本王国記』に掲載されています。この逸話が、どこまで「史実」を反映しているかは別として、信長に仕える前の秀吉にまつわる史料としては貴重なものではあるでしょう。

 同書によると、ある時、秀吉は同僚らと言い争いになったと言います。彼らが仕える主人がその理由を秀吉に聞くと「同僚らが多くの薪を使っている」ことを秀吉が指摘したことが要因とのこと。秀吉は薪の消費は少量で良いと考えていたので、無闇に多くの薪を使う同僚らの行為が、腹立たしかったのでしょう。

 秀吉の声を聞いた主人は、すぐに秀吉を「酒造りの役人」に採用します。それまで秀吉は、山から薪を拾ってくる仕事に従事していましたが、そこから抜け出せたのです。

「酒造りの役人」ですから、当然、秀吉には部下(作業従事者)がいます。この逸話が本当だとすると、この時、秀吉は初めて指導者的な立場となったと言えます。

 秀吉は、酒造りの作業従事者らに、的を射た指示を与えたそうです。主人は、秀吉に恩賞を与えなかったようですが、効率的に仕事ができる仕組みは整ったとのこと。秀吉の賢明さは「彼は貧しい家の出ではなく、高貴な人の息子ではないか」との噂を伴ったそうですので、余程のものだったのでしょう。