稀代のデザイナーが見せる“神業”のトーン・オン・トーン

写真:AP/アフロ

 カリフォルニア州サンマリノにあるハンティントン図書館内のローズガーデンを舞台に、ブランド初となるアメリカ西海岸でのショーを開催。ポロをはじめ、パープルレーベル、RRLといったレーベルの新作コレクションが一挙に紹介された。ラルフ・ローレン氏は、ジャケットにスウェットパンツ、ランニングシューズという白を基調にしたスタイルで登場し、観客に一礼した。

「一目見て『素晴らしい!』と唸らされたベストルック。オフホワイトのジャケット、ベージュのタートルニット、白のパンツ、クリーム色のスニーカーとトーン・オン・トーンで表現されていて上品な印象に。リネン素材でパッチポケットにアクションプリーツが入っていてややカジュアルなムードのジャケットは、リブ付きスウェットパンツ、スニーカーとの相性を計算してこそのチョイスなのだなと舌を巻きました。素材、ディテールなど計算された上でのコーディネート、そしてハズシのテクニックを盛り込んでいるのは僕自身とても勉強になりました。いくつになってもファッションを楽しんでいるなぁと感心し、ファッションの楽しさ面白さを改めて教えてもらいました。いつまでもお元気でいてください!」


 ファッション界きってのクリエイターであり、全米で最も偉大なデザイナーなどと枕詞は多くあるが、元々はブルックス・ブラザーズのセールスマンだったことをご存知だろうか。貧しかった少年時代から洋服にかける思いはとても強く、ブルックス・ブラザーズでセールスマンとして働いた後、ネクタイのお店を開業し、1967年に自身のブランド「ポロ」を立ち上げた。1970年代に映画『アニー・ホール』や『華麗なるギャツビー』で衣装を手がけたことも。

 ラルフ ローレンの関心は常に顧客が持っているワードローブに自然に加えられるようなクラシックな服をデザインすることにある。「本質的にスタイリッシュでタイムレスな服を作ることは難しく、価値があることだと思っている。

 特に今日ではサステナビリティの意識が高まっており、長く使えるものを作ったり、買ったりすることが重要となりつつある」と語るように、目新しく主張の強いものを作るのに熱中する多くのデザイナーとアプローチを異にしているのだ。着こなしを知り尽くした男の“クラシック”は今も更新され続けている。

 

四方章敬(しかたあきひろ)
1982年京都府生まれ。スタイリスト武内雅英氏に師事し、2010年に独立。ドレスファッションに精通し、「LEON」「MEN’S EX」「MEN’S CLUB」など、多くのメンズファッション誌からオファーを受ける敏腕スタイリスト。業界きってのスーツ好きとしても知られ、イタリア・ナポリまでビスポークに赴いた経験もある。最近はセレクトショップやブランドと共同でウェアのプロデュースを手掛けるなど、活躍の幅を広げている。