淡雪のようなふわふわの卵白あんかけをのせた絶品炒飯はハズせない
華祥の料理の中でも、先代が考案した『卵白あんかけチャーハン』は名作だ。パラリと炒め上がった炒飯に、ふんわりと卵白の綿帽子がかぶるそのフォトジェニックな姿は食いしん坊を激しく誘惑する。
この料理の秘訣は卵の3段活用にある。まずベースとなる炒飯だが、全卵にご飯を加えて炒め、卵の旨みを米粒にまとわせるようにコーティングする。あんかけの卵白は2パートに分け、ひとつは鶏がらスープとエバミルクを加えて120℃という低温で加熱。残りの卵白は水溶き片栗粉を加えて後入れする。時間差で卵白を入れることで“ふんわり”と“クリーミー”のふたつの食感を表現できるという。
もうひとつ、「人気メニューです」と田口さんがおすすめするのが『雲白肉(ウンパイロー)』。真っ白な脂がまぶしい、茹でた豚バラ肉の塊をごく薄く切り、せいろで温めてキリッとした辛いソースを散らす。添えるキュウリも包丁でそぐようにごくごく薄く切り、水にさらしてパリッとさせている。ふんわりと口中に広がる豚肉の風味とシャキッとみずみずしいきゅうりの掛け合いが絶妙だ。単純な料理でありながら、ごく繊細に調理することで料理のクオリティはグンと引き上げられている。
田口さんは同じ料理であっても決して味見を欠かさない。野菜であれ、卵であれ、個体差もあり、季節によっても全く同じ味というわけにはいかない。味をみることで、その変化をとらえていつもの味に落とし込むのである。
またここは点心も実にいい。例えば、豚肉、海老、ねぎ、しょうがというオーソドックスな具の『水餃子』は、つるりとのどごしがよく、噛めば中から具のエキスがほとばしる。調理を見ているとゆっくり丁寧に茹でているが、そのタイミングをきくと、
「ふわっとする瞬間があるんですよ。そこをとらえます」と田口さん。
その料理人にしかわからない、そういう感覚こそが料理にとって大切なことなのだろう。