デジタルマーケティングの重要性が叫ばれながらも、「なかなか、社内の体制になじまない」と悩む企業は少なくない。そんな中、組織の体制や基盤を整備し、マーケティング部門とセールス部門の連携強化で、デジタル化を推進してきたのが日立製作所だ。同社は2018年ごろからデジタル化に注力を始め、今まさに効率的な営業活動を実現しつつあるという。同社のデジタルマーケティングの取り組みを、日立製作所デジタルマーケティング統括本部デジタル戦略本部 DXプロモーションセンタプランニングエキスパートの佐藤正樹氏に聞いた。

※本コンテンツは、2022年7月1日(金)に開催されたJBpress/Japan Innovation Review主催「第5回 Marketing & Sales Innovation Forum」の特別講演3「日立製作所が進めるBtoBマーケティング~『ありたい姿』に向けた4年間の活動の記憶~」の内容を採録したものです。

マーケティングプロセスを「点」から「線」へつなげる試みを

 日立製作所は、2018年にデジタルマーケティングのチームを立ち上げた。デジタル活用の体制や基盤をつくる上で同社が目標としたのは、マーケティングプロセスを「点」から「線」へつなげて見える化することだった。

 それまで同社では、プロモーション部門は展示会やセミナーを企画・運営する部隊、事業所見学やショールームを担当する部隊、ウェブやメールといった情報発信を専門とする部隊、といった形で、機能ごとに業務が分かれていた。しかし部門内だけでマーケティング活動を行っていると、手段が目的化してしまう傾向があった。例えば、顧客との接点をつくる手段としてウェブのPV数を調べているにもかかわらず、いつの間にかPV数を稼ぐことだけに焦点を当て、肝心の顧客接点を創出するという観点が抜け落ちてしまう、といった具合だ。

 また、以前はメールのクリック率やウェブのアクセスログを手作業で集計していたので、営業部門に共有するまでに時間がかかってしまい、営業担当者が顧客に提案するタイミングに間に合わないといった不具合も生じていた。佐藤氏は、こうした当時の状況に課題を感じ、部門の壁を越えて一気通貫でマーケティング活動を行う必要性を、強く感じたと振り返る。

「それぞれの部門がバラバラに行っていたことをまとめ、いかに営業活動につなげるかが、最も必要ではないかと考えました。そこで広報・宣伝からプロモーション、そしてセールスまでのマーケティングプロセスを『点』から『線』へつなげるために、新たにデジタル・マーケティング・チームを立ち上げたのです」

 このデジタル・マーケティング・チームができるまで、日立製作所の中にマーケティングに明確に取り組む部門はなかったという。その点からも、この4年前のチーム設立は同社にとって画期的な一歩だったといえるだろう。

 とはいうものの、一気通貫のマーケティングプロセスを実現するためには、部門間の連携が不可欠だ。そこで同チームは、まず営業部門と連携し、互いに情報共有をしながら、マーケティングを営業活動につなげていく方法を模索していった。