早稲田大学ビジネススクール 教授の杉田浩章氏(撮影:今祥雄)

 企業規模を生かしたコスト削減での利益確保や、市場シェア率による優位性といったビジネスモデルは崩れ、今では新規事業開拓のための人材・資金確保も難しい。そうした中、企業が生き抜くためには、何が必要なのだろうか。『成長を生み出し続ける企業の10年変革シナリオ時間軸のトランスフォーメーション戦略』の著者であり、経営コンサルタントとして名だたる企業の経営改革に関わってきた杉田浩章氏は、トランスフォーメーション戦略には5つのポイントが不可欠だという。10年後も生き残る企業に欠かせない5つのポイントとは何か?

変革には最低でも10年、視点を変える時が来た

――著書『10年変革シナリオ』でも書かれていますが、なぜ企業のトランスフォーメーション戦略に10年という時間が必要なのでしょうか。

杉田 浩章/早稲田大学ビジネススクール 教授、ボストン コンサルティング グループ シニア・アドバイザー

JTBを経て、ボストン コンサルティング グループに入社以来30年弱にわたり、消費財、メディア、ハイテク、産業財など、さまざまな業界の経営課題の解決を支援。2006年から2013年にかけてBCGジャパンのオフィスヘッド、2016年から2020年にかけては同社の日本代表を務めた。現在は同社のシニア・アドバイザーのほか早稲田大学大学院経営管理研究科の教授、ユニ・チャームの社外取締役、Kaizen Platformの社外取締役を務める。

杉田浩章氏(以下敬称略) これは日本企業だけでなく、グローバルでもそうだと思いますが、企業そのものが成長基盤を再構築するためには時間軸を10年くらい伸ばしてビジョンと戦略シナリオを構築しないと、もう出口がないと感じています。10年というのは、これまで私がさまざまな企業の変革のお手伝いをしてきた経験からくる体感的なものですが、最低でも10年は必要でしょう。

 企業が中期経営計画を立てる場合、3年先までの計画を作成するのが大半です。3年という時間軸では、自分たちのコア事業をどう維持していくか、再生していくかに経営の視点は向きがちになってしまいます。ひき続きコア事業をどう伸ばしていくのか、あるいは既存の競争環境の中でマーケットのポジションをどう引き上げてくか、それによって収益力をどう回復していくかを中心に考え、それを限界まで回し続けるという経営に陥りがちだと思います。

 しかし、3年の中でどう成果を出すかをその都度定めていく経営から脱皮しなければ、企業はどんどん衰退するばかりでしょう。

――3年単位の経営計画から脱しなければいけないのは、なぜでしょうか。

杉田 高度成長の時代も含めてつくり上げてきた、日本企業としてのある種の強みや事業モデルの賞味期限が既に過ぎてしまった、あるいはもはやそれで次の10年は持たないということが明確になったからだと思います。ある程度完成したが故に日本企業は既存事業モデルを磨き込んで、磨き込んで、それでどう勝ち抜くかにまい進してきました。

 しかし、いくら磨き込んでも、成長し続けられるスペースは既にとても小さくなっています。市場がこれからも伸びていく前提で、投資をしながら回していけるならいいのですが、市場が伸びない中で、ひたすら磨き込みを続けているのでレッドオーシャンの中から抜け出せないのです。

 だから、何らかの形で経営の目線・視点を変えていかない限り、もう出口がないというところまで来たと感じています。

――そうした実感はどの程度前から感じていましたか。

杉田 日本というマーケットの限界は、2000年に入ったころから皆さん見えていたと思いますし、その予兆はもっと前からあって、単純に人口動態だけ見ても、これから先の成長や今まで前提としてきたボリュームゾーン、消費者の価値観に応えることだけでは持続的な成長は極めて難しいことは分かっていたはずです。

 それでも、中期の計画で3年程度は何とか保たせられたから、また次の3年と磨き込みを猛烈にがんばってきたわけです。