名品は時間を掛け積み重ねられた伝統の力が生み出すもの。そして物作りの情熱は、やがて過去の名品さえも進化させていく。ロングセラーとヘリテージをつむぎながら誕生したニューデザイン。その二つを知ることで、ブランドの持つ本質と革新性が見えてくる。

写真/青木和也 スタイリング/荒木義樹(The VOICE) 文/長谷川 剛(TRS) 編集/名知正登

旅のシーンを華麗に彩るグッチのDNA

 イタリアを代表するラグジュアリーブランドとして、モードシーンを席巻し続けるグッチ。創業者、グッチオ・グッチがフィレンツェにて1921年に興したレザーグッズ専門のショップがブランドの原点である。才に恵まれたグッチオの仕事は早々に認められ、ブランドは順調に成長した。なかでも注目を浴びたアイテムが、旅に便利なバッグ類である。

 実はグッチオ・グッチ、祖国イタリアにてビジネスを興す以前、英国やフランスに渡り知見を広めていた時期がある。とりわけロンドンでは当時著名であったザ・サヴォイに自ら勤め、世界中から訪れる人々のスタイルに加え、バッグや小物に注意を払っていたという。その経験から生み出されたグッチのバッグが、旅を愛する富裕層に受け入れられたのは至極自然。ほどなく旅行用バッグはブランドを支える主要アイテムとなったのだ。

 そんなグッチのバッグを語る上で外せないデザイン的アイコンが、1950年代に生まれたウェブ ストライプ。グリーン・レッド・グリーンの配色が鮮やかな意匠は、トスカーナ地方に伝わる馬の鞍を固定する腹帯をアレンジしたもの。また、ブランドを代表する鞄素材であるGGパターンは、グッチ初のシグニチャーデザインである格子柄のディアマンテに、創業者のイニシャルを組み合わせ1965年に作り出された。以降、グッチのバッグを彩る大いなるレガシーとなり、今に至っているのである。