写真/青木和也 スタイリング/荒木義樹(The VOICE) 文/長谷川 剛(TRS) 編集/名知正登

名品は時間を掛け積み重ねられた伝統の力が生み出すもの。そして物作りの情熱は、やがて過去の名品さえも進化させていく。ロングセラーとヘリテージをつむぎながら誕生したニューデザイン。その二つを知ることで、ブランドの持つ本質と革新性が見えてくる。

名優も魅了したミラノ発の高級皮革ブランド

 数あるイタリアンブランドにおいて、比較的創業が古いセラピアン。NHKが初めて全国中継をスタートさせた1928年に、ステファノ・セラピアンがミラノにて革製品を作り始めたことにすべては由来する。後にビジネスパートナーとなる、ジーナ・フローリとの出会いもまたブランドのその後を決定する分岐点となっている。

 ミラノの中心地にオーダーメイドのアトリエを構え、特別なアイテムを求める女性や、確かな品質に信頼を置く男性に支持され、成長を続けたセラピアン。厳選の高級素材使いに加え高感度なデザイン性、それに熟練の職人技から生み出されるラグジュアリーなレザーグッズは、富裕層やセレブリティに愛され、名優オードリー・ヘプバーンやフランク・シナトラ等の著名人をも魅了した。

 すべてにおいてハイレベルを貫く実力派の革匠だが、特に固有素材を複数作り出してきた開発力は見逃せない。水濡れや摩擦に強い型押しカーフの「エヴォルツィオーネ」や柔軟を極めた肌触りを特徴とするカーフの「カシミア」、それに細紐状のソフトナッパレザーを編み込んで作る「モザイコ」も、セラピアンならではのスペシャルな革材だ。クオリティと個性を備えた素材があるからこそ、虚飾を排したシンプルバッグも、一際強い輝きを放つのである。