本や雑誌の特集、テレビ番組でも根強い人気がある世界遺産。海外旅行を計画する際は、世界遺産を目的にする方も多いのではないでしょうか? 2023年1月現在、世界遺産は文化遺産900件、自然遺産218件、複合遺産39件を含む1157件が登録されています(日本はそのうちの文化遺産20件、自然遺産5件)。この連載では観光から一歩踏みこんで、泊まることができる世界遺産を紹介します。宿泊することで、さらに世界遺産を肌で感じることができると思います。
取材・文=杉江真理子 取材協力=春燈社
1000年以上続く巡礼の終着地
スペイン北部ガリシア州のサンティアゴ・デ・コンポステーラは、日本語で「星の野原のサンティアゴ」という意味です。サンティアゴは聖ヤコブを指すスペイン語。新約聖書に登場するイエス・キリストの12使徒のひとりである聖ヤコブは、紀元44年パレスチナで斬首され、使徒で最初の殉教者となりました。その遺骸が埋葬された場所が、不思議な星の光に導かれた信者によって発見されたという伝説に由来した地名です。
聖ヤコブの遺骸があったのはサンティアゴ・デ・コンポステーラ旧市街に建つサンティアゴ・デ・コンポステーラ大聖堂の真下だったことから、大聖堂には聖ヤコブが祀られ、この地はエルサレム、バチカンと並ぶキリスト教の三大聖地のひとつになっています。
この巡礼を成し遂げた者はすべての罪が許され、天国への門が開かれると信じられてきました。14世紀の詩人・ダンテは「サンティアゴを訪れる巡礼者だけが真の巡礼者」と言ったほど、9世紀から今日に至る1000年以上、多くの巡礼者がこの街を目指してきました。このサンティアゴ・デ・コンポステーラ旧市街全体が、1985年に世界遺産(文化遺産)に登録されています。