直営ネット通販事業、横ばいで推移
一方で、アマゾンは現在、創業以来最も厳しい財政状況の真っただ中にあるとウォール・ストリート・ジャーナルは報じている。同社は新型コロナウイルス下の需要増に対応するため人員採用と設備投資を進めてきた。だが22年になるとその特需が終わり、成長が鈍化。軌道修正を余儀なくされた。22年11月には過去最大規模のレイオフ(一時解雇)に着手。23年1月までに計1万8000人のオフィス職従業員を削減した。
22年10~12月期における直営ネット通販事業の売上高は前年同期比2%減の645億3100万ドル(約8兆7900億円)で、2四半期ぶりの減収に転じた。ウォール・ストリート・ジャーナルによると、22年通年における直営ネット通販事業の売上高は前年からほぼ横ばいだった。
また、22年は、米国EC市場における同社のシェアも横ばいで推移したとアナリストらは分析している。Prime会員の伸びも停滞したという。
新たな収益源、サービスプロバイダー事業
こうして成長が鈍化する中、同社は新たな収益源を狙い、サービスプロバイダー事業の拡大を図っているとウォール・ストリート・ジャーナルは報じている。アマゾンは、23年1月、外部の小売業者がアマゾンの物流資源を活用し、商品を迅速に顧客に届けるサービスを米国で拡大すると発表した。22年4月から「Buy with Prime(バイ・ウィズ・プライム)」と呼ぶ小売業者向けのサービスを一部の業者を対象に招待制で提供してきたが、このほど招待制を廃止し、米国内の一般小売業者も利用できるようにした。
Buy with Primeでは小売業者が、決済、商品保管、配送などの業務にアマゾンのシステムと物流資源を利用できる。小売業者が自社のECサイトの商品ページに「Buy with Prime(Primeで購入)」ボタンを設置し、Primeの会員がこのボタンを押すと、アマゾンのアカウントで決済できる。アマゾンのサイトと同様に配送特典を受けられるほか、返品の際に送料がかからない。
この小売業者向けサービスにより同社は、販売手数料や決済手数料、物流サービス料などを得ている。米金融大手モルガン・スタンレーは、Buy with Primeによってアマゾンの年間利益が約35億ドル(約4800億円)増加する可能性があると指摘している。