基調講演を行うハーバード・ロー・スクール 教授のLawrence Lessig氏

 デジタルガレージとDG Labの23回目となるグローバル・カンファレンス「THE NEW CONTEXT CONFERENCE TOKYO 2022 Fall」。web3がもたらす未来の可能性をテーマとした2022年夏に続く今回は、「Designing Our New Digital Architecture」をテーマに掲げ、新たなデジタル社会の基盤を考えるものとなった。ここでは、法律、アート、経済、技術など各分野のパイオニアが活発に議論した、パネルディスカッションの内容をレポートする。

web3の新たな所有形態から、新たな民主主義が生まれる

 ディスカッションに先んじた基調講演では、サイバー法の権威でクリエイティブ・コモンズの創設者であるハーバード・ロー・スクール 教授のLawrence Lessig氏が登壇した。

「アメリカではweb3とは、詐欺や金儲けのための言葉だとされている」と、暗号通貨バブルによるweb3への不信感がいまだに大きいことを指摘。「多くの人々が、なぜweb3が重要なのかを理解できるようなブランドをつくっていかなければなりません」と主張した。

 そのために必要なものとしてLessig氏が掲げるのは“code is law”というキーワードだ。それは「コードが法律のように機能する」ということであり、「変わらないものを変えるための、人間がつくり上げた機構」であるということ。そして、重要なのが、これをつくった人間にはコードを守る責任があり、コードが及ぼす作用には、人間が介在していなければならないということだ。

 Lessig氏は、これまで公共財が、個人の活動の副産物として生まれてきたことに言及し、「web3は透明性をもって、よりパワフルに公共財をつくる基盤になることができます。新しい所有形態をつくり、新しい民主主義をつくることができます」と強く語った。

 その一方で特にAIを挙げて「テクノロジーにはいい面と悪い面がある」と述べながら、インフラを合理化することでコストを下げて、より良いものをつくっていけるはずだとした。

「より安く、より効率的に、より最適に、人間の社会をコードによって変えていく。それがweb3の可能性です。政府が機能していない今こそ、“code is law”を“code make better law”に変えてガバナンスシステムを構築し、イノベーションを支えていくべきです。これはブランディングではありませんが、今、最もweb3に必要なことです」とLessig氏は語った。