写真/青木和也 スタイリング/荒木義樹(The VOICE) 文/長谷川 剛(TRS) 編集/名知正登

モダンセンスを込めた“用の美”

 ハイファッションなどの情報に敏感でない人でも、ひょっとしたら『プラダを着た悪魔』という映画を知っているかもしれない。映画の公開は2006年であるがプラダの創業は古く1913年だ。ミラノを拠点に、旅好きの創業者が世界中から集めた希少な素材を用いたバッグなど上流階級から評判を得たことが、ブランドの基礎となっている。

 そして1978年に創業者の孫娘であるミウッチャ・プラダがブランドの経営とデザインの両面で参画したことで、ストーリーは大きく動き出す。自らを「パンク」と自認するミウッチャは、常に他にはない革新的なアクションを実践する人物。今やプラダのシグネチャーであるブラックナイロンのバッグも、そんな彼女の反骨精神から生まれた独自性あふれる傑作だ。

 また、プラダ流デザインを読み解くなかで“合理性”は見逃せないポイント。確かに同ブランドのジャケットやコートも無駄のないソリッドなデザインだ。しかしとりわけ機能性や実用性が深く問われるアイテムと言えばバッグが筆頭格。モードのデザイン性を持ちながら、長年トレンドに関わらず機能的に愛用できるプラダのバッグこそ、ブランドの革新性が実感できるアイテム。ファッションビギナーにこそ手にしてほしい逸品揃いなのである。