写真/青木和也 スタイリング/荒木義樹(The VOICE) 文/長谷川 剛(TRS) 編集/名知正登

バッグ(W26×H19×D4.5cm)¥396,000/ディオール(クリスチャン ディオール)

天才によって引き継がれてきたフレンチ・モードの殿堂

 1946年にデザイナーであるクリスチャン・ディオールにより創設された、フランスを代表するモードブランド。ディオールは少年時代において、建築における装飾技術などを学んでおり、ウエアや小物類のクリエーションにも、その知識や経験が生かされたと言う。

 若い時代から独自の才が認められていたディオールだが、広く世に出るきっかけとなったのが、1947年に発表した“ニュールック”スタイルだ。なで肩かつタイトに絞られたウエストの上着に、フレア型のスカートを組み合わせたスタイリングは、戦後の解放感を見ごとに表し世界を熱狂させた。

 そんな偉大なるクリエイターの跡を引き継ぐ形で、1950年代からはイヴ・サン=ローランやジャンフランコ・フェレといった天才達がデザイナーとしてメゾンを牽引していく。名品として知られる「サドル」バッグもまた、時代を切り開く“異才”が作り出したもの。

 手掛けたのは1996年からディオールのアーティスティック ディレクターとして活躍した英国人、ジョン・ガリアーノ。大胆にも乗馬用の鞍をモチーフとしており、個性的なアシンメトリーフォルムは、世代を超えて支持されるメゾンのアイコンとして、今も多くのファンを惹き付けてやまない。

 

【BASIC ITEM】乗馬用の鞍から発想した独創的な「サドル」バッグ

バッグ(W26×H19×D4.5cm)¥396,000/ディオール(クリスチャン ディオール)

 不世出の天才デザイナー、ジョン・ガリアーノにより、ディオール在籍時代である1999年に生み出された「サドル」。当初はレディスとして生まれたアイコンバッグがジェンダーの枠を超えたのは、2019年にメンズのアーティスティック ディレクターであるキム・ジョーンズのアレンジによる。以来、毎シーズン新たなサイズや柄を纏ってメンズサドルは華やかに打ち出され続けているのだ。

 なかでも定番的にラインナップされるのが、シックなブラックレザーを用いたソリッドモデル。レディスの「サドル」とは異なり、バッグ本体上下に伸びる太幅のストラップを備えており、ボディにフィットし安定的に持てるところが大きなポイント。

ストラップのバックルは重厚なメタル製。手馴染みの良いマット仕上げも特徴的。メカ的な造形がストリートな雰囲気を引き立てる

 レザーの街であるフィレンツェのアトリエにて、熟練職人が作り上げるというこの名作バッグ。個性的でありつつラグジュアリーな高級感を漂わす大人の逸品として完成している。

なめらかなタッチの高級グレインレザーを採用。シルバーの箔押しロゴは、本体正面ではなく背面というのがなんとも小粋

 

【NEW ITEM】高感度なアーカイブパターンでさらに革新的

バッグ(W26×H19×D4.5cm)¥396,000/ディオール(クリスチャン ディオール)

 ディオール・バッグの象徴である「サドル」を巧みにメンズに落とし込んだ鬼才、キム・ジョーンズ。さらに彼はディオール特有の美を「サドル」にインプットすることにもトライした。

 幾何学的な美観を誇る「CD ダイヤモンド」モチーフは、1974年の当時、ディオールのアーティスティック ディレクターであったマルク・ボアンが生んだクールな装飾デザイン。そのレガシーをキム・ジョーンズは再解釈し、モダンなグラフィックパターンへとリファインさせている。

ブランドネームのイニシャルを組み合わせたオリジナル模様である「CD ダイヤモンド」パターン。幾何学的な美観がポイント

 かくて「サドル」をはじめとするディオール・バッグは新たな意匠を手に入れ、見事革新的コレクションへと飛躍。用いる素材もサステナブル認証のGOTSを取得したコットンキャンバスをベースとするなど、新時代らしいスペックも併せ持つ。シンプルな装いでもこのバッグがあれば、コーディネートは高感度にランクアップすること確実。そう、“着こなすバッグ”という新たなエッジも獲得しているのだ。

ショルダーストラップはジャカード織りにてブランド名を入れ込んでいる。本体のみならず、どこから見てもディオールであることが分かるデザイン

●商品の問い合わせ先:クリスチャン ディオール TEL0120-02-1947