国際スケート連盟公認の国際大会で初優勝

2022年10月22日、スケートアメリカでリズムダンス『コンガ』を演じる村元と髙橋 写真:Mathieu Belanger/アフロ

 そもそも、実質的に国際大会4戦目で迎えたのが世界選手権だ。その事実もまた2人の長足の進化を物語っていたし、いざ大会ではアイスダンスとしてのキャリアの短さから生じる緊張など、演技においてうまくいかない面もあった。なおさら、もっとできる、という思いを感じることに違和感はなかった。

 だから、4月の「スターズ・オン・アイス」出演を経て、5月27日、2人は競技を続行することを発表したのも、ある意味、自然な成り行きだった。

 迎えた今シーズン、リズムダンスは『コンガ』、そしてフリーダンスは『オペラ座の怪人』であることを明らかにする。2006-2007シーズン、髙橋がフリーで用いた曲でもある。とりわけ、同シーズンの世界選手権での、ステップで場内の拍手と歓声を呼び、プログラムの世界を存分に伝える演技でトップの得点をたたき出し、銀メダル獲得につながった好演は今なお、印象的だ。

 対照的な曲調の2つを、スケートアメリカの2人はしっかりと描き出した。

 リズムダンスではスピード感にあふれ、そして陽気な、衣装にふさわしい格調も含む踊りを見せる。

 フリーダンスではスタートからプログラムの世界に連れていく。音楽をしっかり動きの中におさめ、2人のコンビネーションのよさも伝わる。シングルのときとは異なり、2人だから表すことができるストーリーを体現する。フィギュアスケートのファンにとどまらず、広い意味でのダンスのファンであれば引き込まれるのではないかと思わせる魅力がそこにあった。

 スケートアメリカは髙橋にとって9年ぶりだった。それはあらためて髙橋の刻んできたキャリアを思わせた。同時に、「トップの選手たちと試合をできる楽しさの方が大きいかな」という言葉に、まるで伸び盛りな位置にいる若手スケーターであるかのような感覚が起こった。

 スケートアメリカの翌週にはチャレンジャーシリーズ・デニステンメモリアルチャレンジに出場。リズムダンスで自己ベストを更新するなどして、国際スケート連盟公認の国際大会で初優勝を達成した。

 次戦は11月18日に開幕するNHK杯。2人が氷上に描き出す世界はどこまで広がっていくのか、その道のりの過程にある大会が始まろうとしている。