政府系の開発銀行として設立され、東南アジア最大の銀行となったシンガポールのDBS銀行は、DX(デジタルトランスフォーメーション)で自らを変革し、3年連続で「世界最高の銀行」に選出されるまでになった。同行がデジタルで目指すものは何か。DXの原動力となったカルチャー、マインドセットはいかに構築されたのか。そして、近い未来、同行が実現するものは何か。DBS銀行東京支店在日代表Ken Foo(ケン・フー)氏が同行のデジタル戦略の全貌を語る。

※本コンテンツは、2022年8月24日(水)に開催されたJBpress/JDIR主催「第3回 金融DXフォーラム」の特別講演V「DBS銀行のデジタルトランスフォーメーション(DX)」の内容を採録したものです。

「Live More, Bank less」バンキング機能を黒子として顧客の生活に織り込む

 1968年、シンガポール独立の3年後に国の開発銀行として設立されたDBS銀行は、その後の買収を経てシンガポール最大、東南アジア最大の銀行へと成長してきた。日本においては、1977年に初の海外支店として進出。現在はDBS銀行東京支店とDBS証券が存在する。2021年の業績では、総資産が6860億SGD(シンガポールドル)で約66兆円、収益は143億SGDで約1兆3000億円、純利益は68億SGDで約6600億円となる。シンガポール以外にも、インド、インドネシア、中国、台湾、香港を主要市場としながら、18カ国に展開している。

 DBS銀行のDXがスタートしたのは2009年。「私が入行したのも同じ年でしたが、当時は、デジタルの銀行では全くなかった」と振り返るDBS銀行東京支店在日代表のケン・フー氏は、初めに同社が掲げるスローガン「Live more, Bank less」を紹介する。その意味は、「顧客の生活を重視して、銀行の存在を裏へ隠す」というものだ。実はその背景には、1994年にビル・ゲイツが語った「銀行の機能は必要だが、銀行は必ずしも必要ではない」という言葉があるという。

「ビル・ゲイツの予言は、的中しました。Amazon、Google、中国のテンセント、アリババ、彼らは銀行ではないのに、銀行の機能を銀行と同じくらいに持っています。しかも、銀行よりもずっと優れたITの技術を持っている。私たちは恐怖を感じ、自分たちもIT投資をしていかなければならないという結論に達したのです」

 それから同行は毎年、年間利益の10~20%にあたる1000億円相当をITに投資し、またIT人材の確保を進めてきた。現在は、デジタルを活用しながら、より簡単に、より速やかに、より効率的に、銀行の機能だけを顧客に提供することで大きな収益を挙げている。最終的にはバンキング機能を黒子として、顧客の生活の中にサービス、商品を織り込むかたちを目指しているという。