「成長」はスケート人生を表す言葉

2022年10月8日、ジャパンオープンの後のアイスショー「カーニバル・オン・アイス」では今季のSP『Gravity』を披露 写真=西村尚己/アフロスポーツ

 成長は、宇野のスケート人生を表す鍵となる言葉かもしれない。それくらい常に言葉にし続けてきたし、成長を期してスケートに取り組んできた。

 うまくいかないときもあった。とりわけ平昌オリンピックのあとはそうだ。結果を求めて突き進んだ平昌の翌シーズンは思い描いたシーズンにはならず、その後は長年親しんだグランプリ東海クラブを離れ、苦しんだ。成長したいと思っても、それが実感できない時間もあった。

 それでも、根幹は変わらなかった。成長を求める心が折れることはなかった。そのための努力も重ねてきた。その結果が昨シーズンにほかならない。

 そして今も変わりないことを、今シーズンの数々の言葉は示している。「スタート」に込めた思いもまた、一貫する。

 10月8日にはジャパンオープンに出場。フリーのみで行われるこの大会で見せた『G線上のアリア』は静謐さとともに力強さを思わせた。きっとシーズンが深まるにつれ、深みを増していくであろうプログラムのあと、宇野の語った言葉にも手ごたえがあった。

「去年1年間、(フリーの)『ボレロ』をやってきて、そこで培われた体力やジャンプ構成がちゃんといきた初戦だったと思います。演技の動画を見直してみても、去年よりばてずに力強く滑ることができていました」

「カーニバルオンアイス」の最後、プロスケーター生活に終止符を打つことを発表した佐藤有香さんを囲んで 写真=森田直樹/アフロスポーツ

 10月21日にスケートアメリカが始まり、フィギュアスケートのグランプリシリーズが開幕する。

 多くの選手が4年に一度の大舞台を目安に競技生活を組み立てている上に、競技界としてもオリンピックが基点であることから、オリンピックのあった次のシーズンはさまざまな面で動きが起こる。それを踏襲するように、北京オリンピックを経て、やはりさまざまな変化があった。ルール改正が行われたのもその1つだし、男子では羽生結弦が競技の世界から離れ、ネイサン・チェン(アメリカ)は休養を選択したのもオリンピック後の変化だ。

 変化が訪れる中、宇野昌磨は変わることなく、氷上に立つ。

「今後は『この4年』という区切りなく、1年1年、成長できるシーズンにしたいと思っています」

 宇野にとってのグラプリシリーズ初戦、スケートカナダ開幕は間近に迫る。今よりも高みにいる自分を目指し、大会に臨む。