文=松原孝臣
北京オリンピックで銀メダル
大きな、大きな経験を重ねて、シーズンを終えることができた。
フィギュアスケートの鍵山優真にとっての高校生活最後の年は、得がたい1年となった。
その豊かな将来性は、近年、フィギュアスケート界で知られるようになっていた。
ジュニアで戦っていた2019-2020シーズン、全日本選手権で3位と表彰台に上がり、シニアの国際大会では初めての出場となった四大陸選手権で3位になり、世界ジュニア選手権でも2位と好成績を残した。
シニアになった昨シーズンも全日本選手権で3位になると、世界選手権ではネイサン・チェン(アメリカ)に次ぐ2位で銀メダルを獲得、世界のトップを競う地位にあることを証明した。
数々の成績を残し、迎えた2021-2022シーズンは、オリンピックシーズン。
「一戦一戦を全力で滑る!」
グランプリシリーズ開幕を前に、目標をこのように掲げた。
「最終的にはオリンピックという舞台でいちばん上を狙っていきたいですが、そのためにはまず1つ1つの小さな積み重ねが大切だと思うので、目の前の目標から1つずつクリアしていくのがいいかなと思います」
言葉の通りの姿勢を貫き、結果も残していった。グランプリシリーズ2大会でともに優勝し、全日本選手権は3位。北京オリンピック代表の座をつかむと、迎えたオリンピックでは団体戦のフリーで好演技を見せて日本の銅メダル獲得に寄与し、個人戦でもショートプログラム、フリーで大きなミスのない演技を披露、銀メダルを手にしたのである。
世界選手権では2大会連続の銀メダル
迎えたのは、シーズンを締めくくる世界選手権。チェンの欠場もあり、鍵山は優勝候補の1人として周囲からの期待を集める中、鍵山は試合に臨んだ。
ショートプログラムの冒頭、鍵山はGOE(できばえ点)で実に4・57、2つ目の4回転トウループ-トリプルトウループでも3・53と高い評価を得る完璧なジャンプを見せる。ただ、最後のトリプルアクセルの着氷で乱れ、減点された。
「最初の4回転ジャンプ2本が練習よりいいのが跳べて、それにびっくりして慎重になってしまいました」
4回転ジャンプが2つ完璧だったから、3つ目もしっかり決めようと考えた結果だった。それでも宇野昌磨に続く2位、得点も大きな差はない中、フリーに臨む。