ENEOSホールディングス取締役副社長執行役員CDO 椎名秀樹氏

 連結売上高10兆9218億円、連結従業員数4万1800人超、石油元売として国内最大手のENEOSグループが急ピッチで事業変革を進めている。石油の開発から精製、販売を手掛けると同時に、銅などの非鉄金属の生産から加工までを手掛ける同社を取り巻く経営環境の変化は激しい。この変化に対応する鍵として挙げられているのがデジタル技術の活用だ。その戦略についてENEOSホールディングス取締役副社長執行役員CDOの椎名秀樹氏に話を聞いた。

2つのDXを両輪に事業変革を進める

 ENEOSグループを取り巻くビジネス環境は大きく変化している。基盤事業である石油精製販売では国内需要の減少が続く中で“脱炭素”への転換が急がれる。一方、銅製品を中心とした金属部門はスマートフォンや自動運転技術などで製品に対するニーズが拡大し、追い風を受けている。当然、DX戦略もそれぞれ異なる。

 ENEOSホールディングス取締役副社長執行役員CDOの椎名秀樹氏は「DXは手段であって目的ではありません。あくまで業務改革と新規事業の創出が目的です。その出発点は企業文化の変革にあります。今年4月にCDOに就任して以来、このことを常に強調して伝え続けています」と語る。

 同社のDX戦略は大きく3段構えになっている。まず長期ビジョン実現に向けて「ENEOS DXの目指す姿」を描き、2025年までに達成したい目標を「ENEOS-DX Core」と位置付け、2030年までに達成したい目標を「ENEOS-DX Next」と位置付ける。

 同社グループが掲げる2040年までに目指すありたい姿は「アジアを代表するエネルギー・素材企業」、「事業構造の変革による価値創造」、「低炭素・循環型社会への貢献」の3つからなる。この実現のためにデジタル技術を活用していくのが同社グループのDXの役割だ。

 2025年までの「ENEOS-DX Core」の目標は、既存事業の徹底的な最適化だ。定型業務を機械化して自動化するとともに、サプライチェーン全体を最適化する。「石油事業は原産国からの調達、輸送、製油所・製造所での精製と製造、タンクローリーでの配送、サービスステーションでの販売とサプライチェーンが長く、部門横断の最適化が必要です」と椎名氏。

 この最適化によって生み出した収益やリソースを「ENEOS-DX Next」へとシフトして、新たな価値を生み出す革新的な事業を創出していく。椎名氏は「既存事業の収益性を上げることと、新たな成長事業を生み出すことを両輪にDXを推進していきます」と話す。