文=山口 謠司 取材協力=春燈社(小西眞由美)
多くの人がそれぞれの悩みを抱えて生きています。
友人や家族など、身近な人が悩んでいる時、どんな言葉をかけたらいいのでしょうか?
言葉の選び方を間違えると、「あなたに私の気持ちは絶対わからない」「放っておいて」など、良好な関係も壊れてしまいかねません。
悩んでいる人にそっと寄り添うような言動ができるといいですね。
ちょっかいを出して相手の心を察する
私は農園を借りているのですが、ここで作ったレタスやきゅうりを、よく人にプレゼントします。そうするとすごく喜んでいただける方と、虫がついているんじゃないかと嫌な顔をして受け取らない方がいます。
受け取ってもらえると「僕のこと受け入れてくれるんだな」ということがわかりますし、嫌な顔をされると「ああ、この方にはさし上げないほうがいいんだな。僕は虫をなんとも思わないけれど、嫌いなんだな」ということがわかります。
こういったもののやり取りから、相手の気持ちを推し量りましょう。
沈んだ顔をしている人にチョコレートをひとつ渡してみてください。笑顔になってもらえたり、断られれば今は何も口にする気も起こらないほど悩んでいるんだと、相手の気持ちがわかります。
慰めの言葉をかける前にまずは映画に誘うとか、面白かった本を進めるとか、いろいろなちょっかいを出して、相手の気持ちを探ってみてはどうでしょう。
そのうえで、今はそっとしておいたほうがいいのか、強引に誘って外に連れ出したほうがいいのかを見極めます。
「いつでもなんでも聞くよ」という姿勢が大事
いきなり「暗い顔してるけど、何悩んでいるの? 相談に乗るよ」というのでは、相手は心を閉ざしてしまいます。
「何かあったらいつでも聞くからね」という姿勢を示して、少しずつでも心を開いてもらえるようにしましょう。
「話したくなったら、何時でも、どこへでも駆けつけるよ」と言ってくれる男性が、女性にモテるそうですので。
たとえば職場の友人が、嫌な上司にいつも叱られているとしたら、
「叱られそうになったら僕を呼んで」
と言います。
「いつも怒っている上司のほうに問題があることを共感してもらえる人がいる。私のことを悪くないと思ってくれている」と、それだけで安心して仕事ができます。
たとえそのような場面になっても助けを呼ぶことはないと思いますが、いつでも助けを呼べると思えることで、心が軽くなります
上司の性格を直したり、転勤させたりなど、問題の根本を解決してあげることはできませんが、寄り添ってくれる人がいることで、その人の心は折れないと思います。
「なんでも言っていいよ」「いつでも言っていいよ」
「悪いことをする人にはいっしょに立ち向かおう」
「何かしてしまったらいっしょに謝ろう」
お互いがそう思えれば、世の中は豊かな人間関係ばかりになるのではないでしょうか?
センスが光る言い換え術
●「仕方ない」を「詮方(せんかた)ない」に言い換える
悩みを抱えている人や落ち込んでいる人に「クヨクヨしたって仕方ないよ」「いつまでも過去に囚われていたって仕方ないよ」などというと、悩んだり落ち込んでいる自分を責められているように感じるのではないでしょうか?
慰めるどころか、「私のことを理解できない人」と反感を買ってしまうかもしれません。
少し古めかしい表現ですが、やんわりとした口調で
「落ち込んでいたところで詮方ないわね」
「昔のことで悩んだところで詮方ないですね」
と言い換えれば、「悩んだり落ち込んだりするのはどうしようもないこと」と悩んでいる自分を受け入れてくれたように感じられます。
そのうえで、「もう十分に苦しんだのだから、そこから離れましょう、一歩踏み出しましょう」というニュアンスを込めて、接してみてください。
「詮方ない」も「仕方ない」と同じで、もうなす術がないという意味の言葉ですが、やわらかい響きがある言葉です。
「多岐亡羊」という言葉があります。道がいろいろな方向に分かれているところで羊が逃げてしまうとことからできた言葉です。枝葉末節に囚われて本質を見失うという意味ですが、探しに行っても羊はもう見つからない、だから深く考えないほうがいいですよという言葉です。「多岐亡羊という言葉があってね」と言って説明すれば、少し気が楽になってもらえるのではないでしょうか。