文=山口 謠司 取材協力=春燈社(小西眞由美)
大切なのはミスを犯したあとの対応
誰でもミスや相手の気を損なうようなことはしたくないと思っています。しかし残念ながら、人間はだれでもミスを犯し、ときには相手を怒らせてしまいます。
ビジネスシーンでも部下や後輩など、誰かのミスを注意しなければならない時、相手を傷つけたり逆効果にならないように、言葉の選び方にはとても気を遣う必要があります。
ミスを犯して後ろめたい時の相手は、それを隠そうとして頑(かたく)なな態度に出ることもあります。
したくてミスをする人はいないのですから、ミスをしたのはしかたない。大切なのはミスを犯したあとの対応だということを伝えたいですね。
ですからまず、相手の心をほぐします。そうすることで素直にミスを悔い、今後は注意するという気持ちになってもらうことが大事だと、私は思っています。
ではどんなふうに伝えるか。とても難しいのですが、こんな時こそ語彙力が発揮されます。
注意する時のコツ:いきなり責めずにやんわりとミスを指摘する
誰かのミスや間違いを注意する時、
「資料にこんな誤りがあることに気がつかないなんて、ありえない。大事なプレゼンだってわかってたでしょ! 2度と同じミスしないで」
などと、はじめから相手を責めるような言い方をしてはいけません。まずはやんわりと間違いをしたことを伝え、徐々に核心に触れるようにします。
「今日のプレゼン、お疲れ様。最後はお客様に気に入ってもらえてよかったね」
というように、うまくいったことを労うことからはじめます。
次に、
「ただ、どうして資料にあんな誤りがあったんだろう?」
「どこの段階で間違えちゃったんだろう?」
などと、相手が話しやすい雰囲気を作って、ミスをした原因を聞き出します。
この時、100%相手が悪いというような言い方をせず、
「私の教え方が悪かったのかな?」
「僕の指示がよくなかったのかもしれないけれど」
「言葉が足りなくて、うまく伝わらなかったのかもしれないね」
というように、こちらにも非があったかもしれない、ということを伝えます。
こんな言い方をされると、相手は自然と「自分のせいで迷惑をかけてしまって申し訳ない」という気持ちになるのではないでしょうか?
逆に自分だけが悪いような責められ方をされると「そっちが説明不足じゃないの?」「忙しかったんだから仕方ないでしょ」「なんで私だけ注意されなきゃいけないの?」など、相手は反省するどころか反発してしまいます。
相手が素直に聞く耳を持ってくれたところで、
「自分で気づいて解決できていれば、さらによかったんだけどね」
「ここが問題だということに、途中の段階で気づいていなければいけなかったんだよね」
と、ミスに気づくことの大切さを伝えます。
「同じ間違いは2度としないようにしたいね。あなたなら、きっとできるはず」
最後に「今後はミスをしないように」という核心に触れるようにします。
ただ大事なのは、部下や後輩を注意するときは、日頃からその人の仕事ぶりをきちんと把握していなければ、いくら的確な言葉で注意をしても、相手には響きません。自分の人間的な魅力を磨くことをつねに心がけてください。