センスが光る言い換え術
●「いい加減なことしないで」を「軽(かろ)んじないで」に言い換える
仕事に対する姿勢や態度を注意する時、つい「いい加減なことしないで、ちゃんとやってよ」などと言ってしまいがちですが、これではイライラをぶつけるだけで、相手の心に届かない言葉ではないでしょうか。
「些細なミスだなんて、軽んじないでほしいな」
と言い換えると、どんな仕事でも軽くみないで丁寧に取り組んでほしい、という仕事に対する心構えが伝わります。「重んじてください」も同じ意味合いです。「重んじる」は男性的な響きがあるので、女性は「軽んじないでください」を使うほうがよいかもしれません。
「このミスを真摯(しんし)に受け止めて、今後に生かしてください」
「真摯さを忘れないで仕事に取り組んでください」
という言い方も、心構えを説くにはとてもよい表現です。
真摯の「真」の旧字「眞」という漢字は「真心」という意味です。漢字上部のカタカナの「ヒ」のような部分は柄杓を、その下の部分は神様にお酒などを捧げる金属製の器「鼎」を表すことから、神様に対する「真心」となったのです。
「摯」は儀式や行政などを執り行う、というときに使う「執」という字の下に手がついているところから、「なんとしてでも執り行う」ことを意味します。つまり、仕事はミスをしても、真心を持ってなんとしてでもやり遂げるという、真摯な気持ちで臨むことが大事だということを伝えることができる言葉です。
●「相手のことを考えてください」を「慮(おもんぱか)ってください」に言い換える
現代の若い人たちはよく、コミュニケーション能力が低いと言われます。コロナ禍でのリモートワークや、顔の表情を隠すマスクで、それがさらに顕著になっているように思います。
やはり仕事においては、社内や得意先との良好な人間関係を築くことが大事です。その根底にはいかに自分の気持ちを相手に伝え、同時に相手の気持ちを推し量ることができるか、ということがあります。
相手を不愉快にさせてしまった人に対して注意する時は「相手のことをよく考えて」と注意したいときは、「慮って」「配慮して」と言い換えてみましょう。
「慮る」は「おもいはかる」が変化した読み方で、「虜」は相手のことを深く、先のことまで考えるという意味があります。そして人のために心を配るのが「配慮」です。どちらも同じように相手の気持ちを想像することの大切さが伝わるのではないでしょうか?
もし、先輩や上司にどうしても同じことを伝えたいときは「相手のご意向を斟酌(しんしゃく)していただけませんか」という表現をしましょう。「相手の事情や心情を汲み取ってください」という意味になります。