文=山口 謠司 取材協力=春燈社(小西眞由美)
ビジネスシーンにおいて、もっとも気を遣う相手はお客様や取引先など、社外の人でしょう。失礼な言葉遣いで相手を不愉快にさせてしまうと、それがビジネスの不利益に直結してしまいます。逆に評価を得られれば新規の取引に繋がったり受注が増えたりと、あなたの実績になり、評価も高まります。
延期のお願いは可能な期日を伝える
どんな仕事でも「いつまででもいいですよ」「できたら教えてください」などということは滅多にありません。ほとんどの場合、納期や締め切りなど、期日の約束をします。
こちらの都合でどうしても期日に間に合いそうになくなった時には、丁重なお詫びの言葉を選んで期限を延ばしてもらいたいことをお願いするとともに、「いつまで」かを伝えることがポイントです。
「1週間のご猶予をいただけませんか? この日だったら責任を持って満足していただけるものを提出できます」
のように、期日をハッキリ伝えてお願いします。
「猶予」には期日を延ばすという意味や、延期を認めるという意味があります。
「1週間のご猶予をいただきたく、お願い申し上げます」
という表現もできます。
ただ、初めから無理な納期を設定された時などは、
「提出期限を◯月◯日に調整いただけませんか」
と、「調整」という言葉を使って、必要以上にへりくだらず、ビジネスライクに伝えていいと思います。
無理なお願いは恐縮していることを伝える
逆に納期を早めてもらうなど、相手にとって無理なお願いをする時は、とにかく「無理を言って申し訳ない」「心苦しく思っている」という気持ちを真っ先に伝えるようにします。
「たいへん恐縮ですが」という言葉はお詫びするときよく使われます。「恐」は誰かに後ろからワッと脅かされるような、何が起こっているかわからない恐怖心を表す漢字です。ですから「恐縮」は、「何が起こるかわからないので、身も心も縮こまっています」という意味なのですが、「申し訳なく思って身を縮ませる」という意味にも使われます。
お詫びやお願いの時に使うと、丁寧さが伝わる言葉です。
あまり「恐縮」を連発すると重みがなくなりますが、「厚かましいお願いで恐縮ですが」などと前置きしてから伝えると、申し訳なく思っている気持ちが伝わるのではないでしょうか?
センスが光る言い換え術
●「お願いします」を「お聞き届けいただけませんか」と言い換える
人に何かを頼む時、なんでもかんでも「お願いします」では、相手に軽いイメージをもたれてしまいます。
あらたまったお願いをする場面では、「なんとかお願いします」を
「ご無理をお願いして申し訳ございませんが、なんとかお聞き届けいただけませんか」
と言い換えてはいかがでしょう。
「聞き届ける」という言葉には、申し出を聞いて許す、承知する、という意味があります。「許してください」「なんとか承知してください」という気持ちが伝わり、お願いを聞き入れてもらうお願いをする時にぴったりの言葉です。
メール文では「なんとかお聞き届けいただければ幸甚に存じます」などと、畏まった表現を使うほうが好ましいでしょう。
●「力を貸してください」を「拝借」と言い換える
「なんとか力を貸してください」というお願いは、社内の上司や先輩にも使う表現だと思います。
まず、「貸してください」と言い切るのではなく、「貸していただけますか」と疑問形にしたほうがやわらかい表現になります。
また、「力」を「お力添え」と言い換え、
「お力添えいただけますでしょうか」
とすると、英語のサポート、アシスト、フォローといった意味合いが含まれ、相手に気持ちよく手伝ってもらえるのではないでしょうか?
メール文では「お力添え賜りたく、お願い申し上げます」と、「賜る」という謙譲語を使うと、目上の人へのお願いにふさわしくなります。
さらに「お知恵を拝借したいのですが」と、相手から貸してもらうより、自分が借りるという意識を日頃からもつと、その謙虚さが立居振る舞いにも自然に滲み出ます。それが言葉の大きな力のひとつなのです。