コロナ禍で、課題であったリモートワークが定着、営業とマーケティングにも大きな変革の時が訪れた。顧客に対するアプローチや情報収集・活用など全てがデジタルを中心に設計されるようになった。日本アイ・ビー・エムのチーフ・マーケティング・オフィサー 執行役員の風口悦子氏は、顧客の行動・嗜好が大きく変化している今、デジタルツールを駆使して顧客を理解することが、一層求められていると話す。先進的な企業が取り組む組織変革は、今後の営業やマーケティングの在り方を規定する試金石となる可能性は高い。風口氏が、顧客起点のBtoBマーケティングの変革と取り組みについて話す。

※本コンテンツは、2022年3月16日に開催されたJBpress主催「第4回 マーケティング&セールスイノベーション フォーラム」の特別講演Ⅲ「顧客起点のB2Bマーケティング変革 営業とマーケティングの枠を超えて」の内容を採録したものです。

対面営業からデジタルセールスへの変化で生まれたメリット

 コロナ禍に揺さぶられる中で企業の働き方は在宅勤務にシフト、営業プロセスも対面の機会が大幅に減少した。これは単に感染症対策というだけではなく、顧客の行動・嗜好が変化したことも大きく影響している、と風口氏は解説する。

「6%から10%の売り上げが、対面営業からデジタルセールスへシフトしているという調査結果があります。これは『移動の時間を伴わず時間を節約できる』などのデジタルならではの利便性がベースにあります。顧客の方でも、必要な場合のみ対面での営業を望む、もしくは全てオンラインで実施したいと考える方が増えています。その割合は、88%にも上ります」

 対面営業に対する顧客の期待も変わった。ベンダーや営業と対面で話す前にデジタル上でさまざまなリサーチを行う顧客は77%。購買を完了するまでに82%がオンラインコンテンツを5つ以上確認している。また、接点のデジタル化によって、レスポンスの速さへの要求も高まっており、問い合わせから1日~2日程度でのレスポンスが求められるようになっている。

 風口氏はそれ以外の重要なデータとして、「レスポンスからインバウンドになる確率8~20%」「インバウンドからSQL(Sales Qualified Lead)になる確率最大35%」「SQLから契約に至る確率20~25%」「ビジネスパートナーが関与する割合80%」などを示し、最後の「ビジネスパートナーが関与する割合80%」からは、多くの企業が複数のパートナーとともに販売などの活動を行っていることが分かると分析する。

 こうした対面営業からデジタル営業へのシフトを受け、プロセスにおいてもデジタルツールを駆使、顧客のエンゲージメントを醸成していく必要性が出てきていると、風口氏は指摘する。

「カスタマージャーニーでどのようにデジタルセリングしていくかが大切になってきます。カスタマージャーニーでは、『情報を発信し、見つけていただく』『知っていただき、学んでいただく』『使っていただき、ご契約いただく』『(お客さまの期待に応え)ファンになっていただく』という体験を繰り返していきます。この点は従来(コロナ禍以前の営業プロセス)と同様ですが、デジタル時代では、想定される顧客をいかに早いタイミングで見つけ出すか、そして顧客が必要な情報を必要としているタイミングで、いかに届けるかが、特に重要になってきます」