ゴーパフの左側のドアがダークストア用出入り口。右側が店舗。奥にダークストアがある

 ウルトラファースト配送の話題が続いたので、今回は別のテーマをと思っていた矢先、その主戦場であるニューヨーク市に住むさがか、近所のゴーパフのダークストアが改装を始め、まるで店舗のようなネオンサインや内装デザインになったのを発見した。

 ダークストアとはご存じの通り、15分から30分以内に生活必需品である食品、日用品を配送するウルトラファースト配送ネットスーパーのフルフィルメントセンターのことで、人口が集中するニューヨーク市内にはウルトラファースト配送が参入した1年程度の間に100カ所以上のダークストアが開業した(図表)。

 それらはコロナ禍などで空き店舗となった物件に、外装・内装ともほとんど手を入れず、棚什器を入れてフルフィルメントセンター化したものだ。たいてい、外から中が見えないように以前ショーウィンドーだった道路側の窓に紙やロゴが入ったビニールシート、ポスターで目張りをしている。

ゾーニング法を根拠にダークストア封じ込めの動き

 ニューヨーク市には土地の用途を細かく規定するゾーニング法があり、用途変更の場合は施工会社等を介して半年前後かかるような面倒な手続きをしなければいけないのだが、実質倉庫であるダークストアが小売店跡地に出店するのは違反だという声が高まっている。街の商店街の中に倉庫ができるのは景観も損なうし、なによりもウルトラファースト配送の拡大は地元小売店やレストランから顧客を奪うという声もある。

 市議会ではこの問題を大きく取り上げ、市の建設局に取り締まりを要請していた[1]。これを受け、5月初旬に建設局はダークストアが店舗として営業継続するためのガイドラインとして①一般の買い物客が店内に入り、商品を受け取ったり、アプリをダウンロードせずにオーダーできなければならない、②道路面に面した窓から店中が見えなければならない、③店舗は倉庫ではなく人々を歓迎するような施設であること、などを発表した。その後、市の建設局の広報担当アンドリュー・ルダンスキー氏は「これらの迅速なサービスを行うフルフィルメントセンターは新たなタイプの事業であり、既存のゾーニング法には特に記載がない。われわれは過去数カ月間、都市計画部とともにこれらの事業に対して適切なゾーニング地区を与えるよう作業中だ」と述べている。

 これが規制として成立するには数カ月を要するが、エリック・アダムス市長は地元メディア『ニューヨークポスト』に「ネットスーパーの倉庫のような施設が市内の店舗スペースに増えることを阻止し、彼らがその場で買物をできるようにするか、郊外に移動するよう動き始めている」と述べた[2]