製造現場のスキル管理の重要性が高まっている

大手製造業のスキルは8万種類にも及ぶ

 製造業が転換点を迎えている。労働人口の減少や人材の流動化による人手不足に加え、AIやIoTの進化や化石燃料からクリーンエネルギーへの移行を受けた事業・技術変化の加速が起きているため、今後は新しい技術領域もカバーできる人材が求められているのだ。

 また、製造業はかつて少品種多量生産が主流だったが、多品種少量生産にも柔軟に対応できるよう、従業員にはこれまでのような単一の技能やスキルだけでなく、「多能工化(マルチスキル化)」の推進が急ピッチで図られている。

 さらに、こうした動きと並行して、ISOやIATFといった品質保証の国際基準は、製造現場に従業員のスキルや教育状況の把握と管理を求めるようになっている。サステナブルな事業継続のため、製造現場はミスなく安定的にものを作り続けることはもちろん、そのほかにもしなくてはならないことが山積しているのである。

 しかし、多くの従業員や技術者などを抱える企業は、現場で働く一人一人のスキルや習熟レベルを把握しきれていないため、これから求められるスキルを「誰にどのように」身に付けていってもらえばいいのか、判断できないことも多い。

 株式会社Skillnoteで代表取締役を務める山川隆史氏は、現場のスキル管理の難しさは多様性と変動性にあると指摘する。

「スキルとひとことで言っても、現場によってはその数は8万種類にも及びます。例えば、同じ“切断”と呼ばれる作業でも、現場が変われば使う設備や難易度が異なり、別の作業としてカウントされます。また、同じ作業ができたとしても、人によってレベルの違いもありますし、そのレベルは毎日のように変化しています。技術を習得すればレベルが上がりますし、設備が入れ替わればリセットされることもあります」

 多くの製造現場では、これまで紙やExcelでスキルを管理してきたが、そのアップデートがなかなか追い付かないのが実態だった。