テーブルの横にあるタップから自分で好きなだけレモンサワーを注げるという、画期的な飲食スタイルを確立した「0秒レモンサワー 仙台ホルモン焼肉酒場 ときわ亭」。なんと60分でレモンサワー飲み放題500円という破格の値段だ。同店はたった2年足らずのうちに50店舗にまで拡大し、現在も多くのお客から高い満足度を得ている。その背景には、お客の利便性や従業員の働きやすさを追求した店舗のDXがある。フードサービスジャーナリストの千葉哲幸氏が、同店を展開するGOSSO株式会社代表取締役の藤田建氏と対談。コロナ禍で急成長した成功の背景に迫る。
※本コンテンツは、2021年11月17日に開催されたJBpress主催「第6回 リテールDXフォーラム」の特別講演Ⅲ「『0秒レモンサワー 仙台ホルモン焼肉酒場 ときわ亭』はなぜ、大繁盛するのか?」の内容を採録したものです。
GOSSOとときわ亭との出合い
千葉 「0秒レモンサワー 仙台ホルモン焼肉酒場 ときわ亭」は、2019年12月に1号店がオープンし、2021年12月には50店舗に到達するなど急成長を遂げています。御社はこれまでにどのような飲食店を立ち上げ、展開されてきたのでしょうか。
藤田 当社は2021年で創業16年目になり、全国で約70店舗を展開、従業員は約800人です。元々、オーロラダイニングやアクアリウムダイニングなど、コンセプトにこだわった店を展開してきました。専門店ブームがきて、チーズフォンデュ専門店や肉バル、肉ずしなどの店舗経営にトライした後、「0秒レモンサワー 仙台ホルモン焼肉酒場 ときわ亭」の展開に着手しました。
千葉 現在、「0秒レモンサワー 仙台ホルモン焼肉酒場 ときわ亭」 は御社の主力業態となっていますが、何がきっかけとなったのでしょうか。
藤田 売上高100億円、100店舗展開を目指す中で、それを継続的に達成するためにSWOT分析した時、「大衆酒場であること」「路面店であること」「日常食であること」の3つのキーワードが浮かび上がりました。この3つがそろえば、顧客から愛され、従業員を喜ばせる会社になれると考えたのです。
その実現に向けて自社のリソースだけでは限界があるため、M&Aを視野に入れて全国各地で将来性のある店舗を探しました。そのときに出合ったのが仙台で約40店舗展開している「ときわ亭」です。当初はデューデリジェンス(適正評価調査)の数字が魅力的で見に行ったのですが、同店舗の塩ホルモンや牛タンのおいしさ、ときわ亭の社長の人柄と商品力の高さ、独自性に気付いて、M&Aではなくパートナー契約を結びました。
味も品質も高い店が並ぶ東京で店舗を発展させるためには、お客さまに来てもらう仕組みが必要だと考えました。そこで、「レモンサワーと塩ホルモンは抜群に相性が良い」というイメージを定着させるため、「0秒レモンサワー」というコンセプトをつくり、お客さまを呼び込むきっかけにしたのです。
顧客と従業員。双方にとって楽しい場所の実現を目指す
千葉 御社の「【人生に潤いを!】ハピネス&スマイル創造カンパニー!」というミッションと店舗運営は、どのようにつながっていくと考えますか。
藤田 当社の理念にある「人生の潤い」というのは、大切な人と楽しい時間を過ごす喜びを分かち合うことです。ときわ亭では0秒でサワーを注いで、肉などを自分で焼いてお客さまそれぞれが大切な人と空間を共有します。そういう場を提供することは、まさに当社のミッションを具現化したものです。
千葉 「人生に潤いを」という理念をもとに、会社内の制度として仕組み化していることはありますか?
藤田 お客さまが行きたいお店と従業員が働きたいお店はイコールであり、店舗は楽しく働きやすい職場でなくてはいけないと考えています。そこで、社員が休日をしっかり取れる仕組みを構築することを重視しています。
従業員が楽しく働けない店舗では、お客さまも楽しくありません。その結果、さらに従業員が働きたくなくなる、という悪循環につながる可能性もあります。そこで、当社では従業員の休日を確保するために、まずアルバイトの離職率低減を図っています。具体的には、労務AIを使った労務環境の分析。アルバイトは勤務経験の長さによって求める承認欲求の種類が異なるため、それに合わせた声掛けが必要なのです。アルバイトが定着し、正社員の休みが確保できれば、従業員自身の「人生の潤い」につながります。
千葉 日々、労働改善を行う上で、どんなことを大切にしていますか?
藤田 居心地の悪い職場をつくらないことです。安心・安全の場であること、そして日々のコミュニケーションを大事にしています。上下や役割の違いにかかわらず従業員同士の関係の質を上げるために、「会議ではなく、会話をしよう」と言っています。違いを尊重してシナジーをつくっていける、そんな環境づくりに力を入れています。